4主×ミレイ「愛とエプロン」 著者:5_882様

「フォー様、はい、あーん…」
「あー…んぐっ?!」
――目の前の少女は、素っ裸にフリルたっぷりの胸当てつきエプロン一枚(もちろん白)、と言う出で立ちだった。
なぜにそんな事がわかったのかといえば、胸の辺りの、…その、ピンクの頂点がしっかり浮き出ていた。
ふっくらとした胸が、ぐいっと胸当て部分を押し上げているのが横から見て分かってしまうし、豊かな丸い尻も見えている。
可愛い声につられて口をだらしなく開けてしまったが、あんまりにあんまりな状況なので椅子から転げ落ちた。
「な、ななな、なんでそんな格好…」
「え? 男の方の夢だ、とお聞きしたんです。『裸エプロンであーんして』は」
「いったいどこの男の…ま、いいや。嬉しいんだけど、正直目のやり場に困るから、きちんと服着てくれないか…」
とりあえず自分の上着を着せ掛けようとすると…じわ。目の前の少女の瞳に涙が浮かぶ。
「はい…申し訳ありませんでした…。私、またフォー様を困らせてしまいましたね…」
しくしくと泣きながら、普段の服に着替えるべく。…彼女は、たった、一枚、身に、付けて、いた、物を、床に…
「どわあああああっ! だから裸になるなって!! …あれ?」
気が付けばいつもの船室、見慣れた天井。…夢落ちですか、そうですか。
(夢だったのならあれこれしとけば…痛っ!)
一瞬不謹慎なことを考えた天罰かと思ったが、そうではなかった。頭が割れるような痛み。全身に残る気だるさと疲労感。部屋に充満する酒の匂い。
――人それを、「二日酔い」と呼ぶ。この結果に至った過程を、ゆっくりと思い出してみる。

 発端は、タルが大物のカツオを釣り上げたこと。フンギに調理してもらい、そのままこの部屋で宴会モードに突入した。
メンバーはガイエン時代からの仲間達、総勢5名(ただし男子限定)。女子2人はなにやら用があるとかで不在だったので、「野郎同士の飲み会」と相成った。
 気心の知れたもの同士、酒が回るのもテンションが上がるのも下世話な話題に移行するのも早かった。
――そうだ、あんな事を主張しだしたのは、確かタルだった。

「だぁらよぉ、さっきからいってっだろ? なんでお前等は『裸にエプロン』のよさが分からないんだよっ!!」
「いや、そういう趣味というか、嗜好というか…人それぞれだから…なあ?」困ったように同意を求めるケネス。他の三人も首を縦に振る。
「だってよー、想像してみろや? 一日の仕事を終えて、自分が家に帰ってくると、可愛い彼女がそんな格好で三つ指ついてお出迎えだぞ?
 そんなん見ちゃったら即座に疲れも吹っ飛ぶしそのまんまその場で押し倒して…」
「…余計疲れるんじゃない? それだったらおれ、その格好のまんまで一緒に晩飯食うよ。こう、『あーんして』とかやってもらったり…」
「やっとわかってくれたかー!! フンギ、おまえってほんっとーにいい奴だな!!」
妙にテンションが上がり、固い握手を交わすコックと最年長者。熱い抱擁まで交わし合っているのはどうなんだ。
「あ…それなら僕も、ちょっと分かる…。いいよね、可愛い女の子が、可愛いエプロンしてるのって…。
 実家にいたとき、メイドの子とか見てドキドキしちゃって、何度手をつけそうになったことか…」
(がんばれジュエル、負けるなジュエル)発言者以外の、4人の心が一瞬だけ一つになった。
「本人が似合うものを着てれば、それで良いんじゃないか? べつに服装に拘らなくても…」
「んじゃケネス、お前ポーラがそういうことしてたらどうなんだよ? 嬉しかぁないのか?」
――仕事を終えて帰ると、夕食の香りが玄関まで漂ってくる。『お帰りなさい、ケネス』
 頬を染めて迎えてくれる、大切な恋人。その姿は素肌に真っ白な装飾過剰気味のエプロン一枚と言う、お約束過ぎて笑いそうな――
「…………………………………………いい、な…………………………………」
(いいのか?!)めったに見られない、アレでナニな妄想中のケネス。清楚で慎ましやかな彼の恋人の真ん前に、この顔を突き出してやりたい衝動に一同は駆られた。
「そういや、フォーはどうなんだ? ん?」
ついに矛先が回ってきた。さて、自分の意見はと言えば――

「…自分を喜ばせるためにそこまでしてくれる、ってのは素直に嬉しいよ。でも、その格好で料理したり他の家事したりするのは絶対に危ないから、そういう意味でやめて欲しい」
「…妙に冷静だな。つまらん」手にもったグラスから、ぐいっとラム酒を呷る。もう何杯目なんだそれ。
「人に意見聞いといてその反応もどうかと思うよ、タル。確かにその格好で料理は辛いよなあ。…んじゃ、料理のときはちゃんと服着ててもらって…」
「終わってからいそいそと服脱いで、帰りを待ってくれるのか。…なんか激しくやらしいな、その光景」
「うわ…確かに。実際にあったら洒落にならないね、それ」
なんだか、自分の発言が新たな妄想の火種になっているようだ。…みんな好きだよなぁ…。
 そのあともずっとこんな調子で会話が続き、酒が切れたところでお開きになった。風呂にでも入って酒を抜こうかとも思ったが、結局そのまま寝てしまった。

で…冒頭のような夢を見てしまったわけだ。にしても、あの少女の顔、どこかで…
とんとん。控えめなノックの音がした。
「フォー様、もう起きていらっしゃいますか? ミレイです」
「…ああ、えっと、さっき起きた。…今、何時?」
「もうお昼ですよ。お腹空いてませんか? バムさんにお料理を習ったので、自分で作ってみたんです。
 …その、もしよろしければ、試食していただけないかと…」
涼やかな声のボリュームが、ほんの少し落ちる。言われてみれば腹が減っているし、彼女の差し入れをありがたくいただくことにした。
「ちょうど良かった。今空けるから、中入って」きっと両手は塞がっているだろうから、こっちからドアを開けなくてはならない。
「はい!…失礼します」かちゃりとドアが開く。そこに立っていたのは、お盆を両手で持ってにっこり笑顔の――
――え?
 太い肩紐には、天使の羽のように整えられたフリル。鎖骨のすぐ下まである大きな胸当ては、豊かな膨らみをしっかり納め、色気を程よくセーブしている。
腰紐はきちんと縛られて、膝上丈のスカート部分がふわふわと優雅に広がり、女性らしい丸みをきちんと覆っているようだ。いつもしているヘアバンドの代わりに、レースつきのカチューシャまでご丁寧に装備している。
首にはおそろいの真っ白なリボンを結び、愛らしさをパワーアップさせている。

 タルがいたら、文句なしで太鼓判を押しそうな程、ミレイにはその装束――エプロン姿――がよく似合っていた。
問題なのは、そのエプロンが覆っている部分以外がすべて、綺麗な肌色だと言うことであって…!
「お加減が悪いと聞きましたので、おかゆを作ってみたんです。お口に合うかどうか分かりませんが…あの?」
目の前の少女が、小首を傾げる。思い出した。朝見た夢の中の少女も、こんな格好で…こんな声で…こんな顔だった。
彼女の動作に我に返り、次の瞬間パニックに襲われた。
(その格好はまずいだろっ!! おいっ!! )
「急いで中に入って!! 速く!!」
「…? は、はい!」
お盆を引ったくるように受け取り、慌てて机上に置く。なるべく彼女のほうを見ないようにして手を取り、入口最奥の席に座らせる。
自分はその向かい側に陣取り、開いたままのドアもきちんと閉めた。ここまでの時間、1秒足らず。
これで、急に誰かが来訪しても、多少時間が稼げる。しかしなんでこんなことに…。
「あ…あの、やはりご迷惑でしたか? 私…」
「いや、そうじゃなくって! むしろ嬉しいんだけど困ったと言うか…心の準備が…」
ぶつぶついうフォーのことが多少気になったが、とりあえずミレイは『嬉しい』の言葉が出てきたことに感激してしまった。
ほかほかと湯気を上げる椀をフォーの前において、薬味や小鉢を並べ、お茶の準備もする。
「昨日は、皆さんと盛り上がってらしたんですよね? フンギさんにお聞きしました」
「…うん、大分盛り上がった」おかげで彼女が直視しにくい。机に額をつけて、うめくようにしか答えられない。
まさか『食事だけおいて着替えてこい』なんていえない。…そこまで無粋じゃないし、そこまで聖人君子じゃない…。
「たぶん二日酔いになってるだろうから、まともに食事できないだろうっておっしゃってて。
 それで、この間習ったおかゆ、作ってみたんです。これなら食べやすいかと思って…」
「…ありがとう。助かる」本気でありがたかった。腹は減っているものの、如何せん胃袋が食物摂取に乗り気になってくれない。
食欲をそそるいい香り。準備を終えて、席についたミレイがエプロンを脱ごうと−

「!!! ちょっと待って!!」
「は、はい? どうかなさいましたか?」
「え、いや、あの…そのエプロン、脱ぐの?」
「ええ。…何か不都合な点があるんでしょうか…」ありだ。大有りだ。この状況でんなことされたら――先にミレイのことを『食べて』しまいそうだ。
「……ミレイ。あの…エプロン、着たままで食事にしない? その…すごく良く似合ってるから、脱がれちゃうのがもったいないかなーなんて」
効果覿面。その言葉にミレイは顔をほころばせ、紐を解く手を止めた。
「!!! ありがとうございます! …このエプロン、バムさんにいただいたんです。ケヴィンさんから昔プレゼントしてもらったとかで…」
「へえ…そうなんだ…」やっぱり顔を直視できず、軽く俯きぎみのままで粥を啜る。味はお世辞抜きで美味いが、フォーの脳内はもうそれどころではなかった。
(何で…この状況で、何時もと変わらずに会話できるんだ…)夢で見た光景がまざまざと甦る。
――胸の辺りの、…その、ピンクの頂点がしっかり浮き出ていた。
――ふっくらとした胸が、ぐいっと胸当て部分を押し上げているのが横から見て分かってしまうし、
――豊かな丸い尻が全部見えてしまっている。
直視できないから、以上の光景を確認できたわけじゃない。『確認』しちゃったら最後のような気がする。
だからかえって回想と妄想だけが先走り、悪循環が止まらない。
――『フォー様、はい、あーん…』
―…彼女は、たった一枚、身に、付けて、いた、物を、床に…
――料理のときはちゃんと服着ててもらって…
――終わってからいそいそと服脱いで…
考え出したら止まらない。目の前の美少女(しかも飛び切りの)による脳内妄想ショウ。
 エプロンして料理して(その光景だけでも一見の価値ありだが)、完成してから服を脱ぎだす。
よくよく考えるとかなり大胆な普段着を脱いで、下着(たぶん白)も躊躇なく脱ぎ捨てて…普段着からして体の線を堂々と見せているから、裸体の想像はしやすい。
しみ一つない(だろう)きめ細やかな肌。出るところはしっかり出て、くびれるべき部分はしっかりとくびれた抜群のスタイル。
ふっくらとした双丘、その頂点は可憐なる桜色(希望)。すべすべとして柔らかそうな腰から腿にかけてのライン、すらりと伸びる両脚。

 それから、今来ている可愛らしさ満点のエプロンを着用。見ごたえのある胸を胸当て部分にきちんと押し込んで、きゅっとくびれた腰で紐を結ぶ。
腰部分のリボンはひらひらと、きれいなお尻の下まで伸びている。前掛け部分はしっかりと…その。一番見せてはいけない部分をきちんと隠せる丈。
揃いのカチューシャとリボンもついでに装備すれば…天下無敵の『裸エプロン』フル装備の完成。世の男どもに等しく『魅了』の効果つき。
 そんな格好のままで、れんげで粥を一すくいして、柔らかそうな唇を尖らせて息を吹きかける。それからおもむろに自分に向かって、
『はい、熱いですから気をつけて下さいね? あーん……』
…あ、胸元が見える。きれいな桜色の頂点も、思わず手を入れたくなりそうな谷間もばっちり拝見できる。ちょっと目線を外すと、程よい肉付きのお尻も見える。
触りたいのはぐっと堪えて、特別な給仕をありがたく頂戴する。…お粥も良いけどミレイもね。食事が終わったらゆっくりと…。
(…って違うだろっ!!)全力で妄想を振り払い、自分自身の正直すぎる生理的反応に涙しつつ。
(まずいって。俺も一応男なんだよ? なんでそんな格好で来るわけ?! …それとも…伝説に聞く『据え膳』て奴なのか?)
ちらりと目を上げると、視線が合った。にっこりと微笑みかけられて、ますますどーしたらいいものか分からなくなる。
その後もほのぼの&悶々とした会食が続き、皿が空になったところで。
「それでは私…失礼しますね」食器をてきぱきと重ねて、ミレイが席を立った。
「ええっ?! その格好で帰るの?!」フォーも席を立った。引き止めるように両手をつかむ。そいつはいくらなんでも生殺し…じゃなくて。他人に見られたらどうするんだ?!
「え、ええ…食器も洗わないといけませんし…」ちょっと残念そうな声に聞こえたが、それもきっと自分の脳内変換だろう。
「あ?! ああ、そっか…そうだよね…」あたりまえの返答に、あたりまえの言葉しか返せない。
(このまんま帰らせたら、彼女が他の奴にどんな目にあうか分かったもんじゃないし…そうだ!)
「…ちょっとまって。お礼に部屋まで送るから」荷物袋から取り出したのは−『またたきの手鏡』。

「ふぁあああああ…眠いなあ…」
第2甲板通路にて、大きな鏡の前に立つ少女。転送魔法の達人、ビッキ−である。
眠気のせいでゆらゆらと揺れる意識の中、彼女の目の前に一組の男女が降り立った。
「ビッキ−! ミレイの部屋までテレポート! 大至急っ!!!」
「え?! あ…はい! それっ!」
寝ぼけながらも、やることはやってのけるビッキ−。さすがは達人。
「…ん? 今、フォーさんと…誰かな? 女の子と一緒だったみたいだけど…あれっ?」
転送した後で気づいた。ほんの少し、ほんのすこーしだけ目測を誤った気がする。部屋の中に飛ばしたのは確かなのだけれど…。
「…んー、ま、いいやー。…それにしても、眠いなあ…」
まどろみの中に、再びビッキ−の意識は溶けていった。

(…なんで、今日は悪い方向にしか進まないんだ…)
ビッキ−の魔法は、時々失敗して、とんでもない事態を引き起こす。ジーンさんが言っていた通りだ。
ミレイの部屋には確かに到着した。…彼女のベッドの真上、人一人分くらいの高さの場所に。二人と食器は幸いにも寝台に受け止められたので、たいした損害はなかったのだが…。
「……………………………」
「……………………………」
ミレイと向き合う体勢で、転送されたのが良くなかったらしい。自分の手が、彼女の両肩をベッドに押し付ける格好で着地してしまった。
華奢な肩。力を込めたら、そのまま崩れてしまいそうなほど。お互いの吐息が顔をかすめる程に、縮まった距離。
 目の前の女の子は、自分を見つめたまま硬直している。髪がちょっと乱れて、石鹸のいい香りが鼻をくすぐる。
髪と同じ色合いの煌めく瞳。すっきりとした鼻梁。ふっくらとした唇。細くて白い首筋。胸元は落ちたときの衝撃で、着衣が乱れて…え?

「…………うわわわわっ! ごめん!」
慌てて手を放し、ミレイを開放する。真っ赤になった顔を背けて、ベッドに腰掛ける。
「……いえ、平気です……」
ちょっと呆けたような声が返ってきた。多分今のショックから立ち直ってないんだろう。事故とはいえ、2・3発ひっぱたかれても普通文句は言えない。
「いや、本当にごめん! そんなつもりは…あれ?」
ちょっと乱れた胸元から除くのは、ミレイの普段着と同じ色の布。…あれ?何か自分は、とんでもない考え違いをしていたのか…?
「ミレイ、あの…そのエプロンの下って、何着てるの?」
「何、とおっしゃられましても…エプロンですから、普通に服は着ていますよ」
起き上がり、するすると紐を解いて、はらりと真っ白なエプロンが落ちる。…確かに下は普段着だった。
 細い肩紐は、エプロンの肩紐とフリルと首のリボンが上に被さって、臍上の短い上着も胸当て部分に隠れてしまい、下にはいている腿上のショートパンツも、前掛け部分にすっぽり覆われて。
種を明かせばそれだけのこと。装飾過剰なエプロンによって、下に着ている物が見えなかっただけ…。
「……そう、だよね……エプロンなんだから、きちんと服は着るよね……」
そもそも、そうでなければ自分の部屋まで来られないだろう。ましてや恋人でもない男の前でそんな嬉しい格好にはならないだろう。
自分自身の先走る妄想に、己が振り回された挙げ句にこの始末。情けなさすぎて、自分で自分を『罰』してやりたい…。
 ああ、なんだか頭が痛い。全身から力が抜けるようだ。座っているのも辛くって、体が大きく横に傾いた。なんだかミレイが心配そうな顔をしている。
「…様? どうかなさいましたか? フォーさま…」
ごめん、大丈夫だって言いたいんだけど、舌がうまくまわらないや。とにかく頭が痛くって…。

「…強いて言うなら、知恵熱ですね」
「知恵熱、ですか…」
フォーがミレイの部屋で倒れた、との知らせは瞬く間に船内に広まった。慌てて自室へ運び、幸いにも手の空いていたユウが呼ばれた。
「ええ。長い時間緊張していたとか、頭を使ったとか。とにかく肉体の限界を超えて頭脳が使われた結果、体にダメージが来ている状態です。
 まあ、一日安静にしていれば治るでしょう。薬も必要ありませんね。栄養のあるものをしっかり食べさせてください」
「はい、分かりました。あとは自分達でやっておきます。お呼びだてして申し訳ありませんでした」
「いえ、御気遣いなく…では、お大事に」
ぱたりとドアが閉まり、部屋にはガイエン時代からの仲間達だけになった。部屋の外では騒ぎ声が聞こえる。
皆、心配で駆けつけたのだろう。ユウが「静かにしてください!」などと怒っている声も聞こえる。
「知恵熱ねえ。いったいなんで? それに、倒れてた場所ってのが…その…」思わずジュエルが言いよどむ。
「ミレイさん達のお部屋だそうです。とにかくユウ先生に診てもらおうと思って、ミレイさんが彼を抱えて、『手鏡』で第2甲板へ移動して…」
「…それからその場にいた人たちに手伝ってもらって、ここまで運び込んだらしい」
「んなとこで、何してやがったんだ? こいつ」ぐっすりと眠るフォーの額を、ごつい指が軽く弾く。
「…うーん、もう一人の当事者に聞くしかないんじゃないのかな。ところで彼女は?」
「今、フンギと一緒に食事作ってもらってる。なんだか随分落ち込んでたから、手動かせば気がまぎれるかな、って思ってさ」
「――なるほどね。ここにも来やすいもんね! ケネスってばやるぅ!」勢いあまって、ジュエルの肘がタルの後頭部をどつく。
「ったっ! 病人がいるんだから暴れるな!」あやうく喧嘩に発展しそうな二人に、ポーラが「お静かに」のサインを送る。

「…彼女が来たら、僕らは退散しないとね。病人の部屋に人がたくさんいるのも良くないし…」
「馬に蹴られるかもしれないしな。あとはお若い方々だけで、といこうか」
「賛成ー! 邪魔しちゃだめよね〜うん、うん!」
「『面会謝絶』の札を貼っておきましょうか? そのほうがゆっくり休めると思うのですが…」
「…それはちょっとやりすぎなんじゃねえか、ポーラ」

――仕事を終えて帰ると、夕食の香りが玄関まで漂ってくる。『お帰りなさいませ、フォー様』
 頬を染めて迎えてくれる、大切な恋人。その姿は素肌に真っ白な装飾過剰気味のエプロン一枚…ではなく。
上記のエプロン装備ではあるものの、きちんと服を着ているのが分かる。その姿に一安心して、『ただいま』と告げる。
…しかしにっこりと微笑む少女は、次の瞬間恐るべき選択肢を突きつけてきた。
『お疲れ様でした。お風呂になさいます? お食事になさいます? それとも――』
くるりと彼女が一回転すると、服は何時の間にか床に落ちていて、生まれたままの乙女の姿が――
『…ミレイになさいます?』
『…………………!!!!』

――結局、彼は『知恵熱』で丸二日寝込むことになり、船医殿を大いに慌てさせたと言う。

おまけ

91 名前:名無しさん@ピンキー

(略)
 まぁ、油モノでなきゃ家事も平気でね?

94 名前:5_882

(略)
>>91
「煮炊きの湯気…水蒸気や火の粉による火傷も結構危険ですよ。
よいこのみなさんはあまり真似をしない方がいいと思います。
お医者様に診せにくい場所に火傷してしまうと大変ですから」
「…実行したんだ、火傷したんだ。妙なとこで大胆だねぇ」
「せっかくのプレゼントですから、正式な作法で着こなさないと失礼だと思いまして」
「どこの国の作法よ?! しかもプレゼントまでするかあのむっつりスケベ!!」
「たしか、ハルモニア神聖国の作法だと非常に真剣な顔で」
「…頭が良いって設定が激しく無駄に使われまくってるわね…」
以上、素直すぎるエルフ娘とその友人による回答でした。(w

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