アレニア(キルデリク×アレニア→ギゼル) 著者:ウィルボーン様

「んん、んぅ…」
石に囲まれた冷え冷えとした部屋の中。アレニアは跪いて椅子に座ったギゼルに奉仕していた。
ギゼルのモノを両手で抱え込んで丁寧に嘗めあげる。喉の奥までほお張って、わざと大きな
音を立てて吸い込む。
「んふぅ…っ」
「ああ、アレニアどの、とてもいい…。そろそろ限界だから、もうけっこうですよ」
アレニアは首を横に振り、なおも奥まで咥え込んだ。ギゼルは体を震わせ、アレニアの口内に
己の高まりを解放した。アレニアは喉に詰まらせながらも、一滴も漏らすことなくそれを
飲み干し、名残惜しそうに口を離す。
「ご苦労様でした、アレニアどの。だいぶ上達されましたね」
「そんな…まだまだです」
「ごほうびを差し上げましょう」
そういうとギゼルはアレニアを自分の膝に乗せ、背後から手を回して服の上から胸に触れた。
「あぅ…ん!」
胸に軽く触れられるだけで、体中が甘く痺れるような快感が貫く。
「あぁ…ギゼルさまぁ…」
ギゼルの片手がそのまま下腹部に伸び、服の上からさわさわと股間をいじる。その絶妙な
指使いは、服の上からでも効果は絶大であった。アレニアはぐったりとギゼルにもたれかかり、
そのまま振り向いて、ギゼルの唇を求めた。
「だめですよアレニアどの、キスはしないと言ったでしょう」
とたんにギゼルの手の動きが止まる。

「も、申し訳ありませんギゼルさま」
「怒っているわけではないのですよ。さて、そろそろ王宮へ戻る準備をしなくては。
アレニアどの、ここの警護はお願いしましたよ」
ギゼルは立ち上がり、乱れた衣装を調えて、何事もなかったかのように部屋を出て行った。
一人残されたアレニアは、扉が閉ざされると同時に冷たい床にへたり込んだ。
「ギゼル…さまっ」
無意識のうちに手が己の下腹部に向かう。先ほどまで愛撫を受けていた体はすっかり準備を
整えている。解放しないことには収まりそうもなかった。
ギゼルによって高められた体の奥の熱い場所に己の指を差し入れ、激しく出し入れする。
「ぁぅ…う!ぅん、ん、あぅぅっ」
普段の、どこか陰のある孤高の女剣士であるアレニアを知る者が見たら、おそらく別人だと
思うだろう。顔は紅潮して口元はだらしなく緩み、己を慰めるその姿は、誇り高き
女王騎士ではなく、まるでどこかの場末の娼婦のようであった。
「ギゼルさま…ああっ!」
先ほどまでギゼルが座っていた椅子に這うようにして近づき、大きく足を開脚して座る。
まるでギゼルに後ろから抱かれているかのような感覚を覚えた。
「も…、もう、だめぇ!」
アレニアは限界を迎えてぐったりと椅子に沈み込んだ。せき止められていたものが外されたかの
ように、泉からは大量の液体が噴出し、椅子を、床を濡らした。だがそんなことは目にも
入っていないのか、アレニアは己に訪れた快感に浸っていた。

しばらく後、アレニアは後始末を終えて部屋を出た。ドアを開けてすぐの階段の踊り場には、
サイアリーズがいつものようなけだるい表情を浮かべて窓の外を眺めていた。
「おや、アレニアじゃないか。ギゼルの部屋で一人で何してたんだい?」
「…ギゼルさまは、御用がおありとかで、先に王宮へ向かわれました。私は後片付けを
仰せつかっただけです」
「へーぇ。後片付け、ねえ」
サイアリーズは殊更に言葉を強調し、腰に手を当てて鼻で笑った。お前たちのことなど
お見通しだ、とでも言いたげな口調だった。アレニアは屈辱で震える思いがしたが、
拳を握り締め耐えた。
「ま、せいぜい頑張るんだね」
この女さえいなければ。
ギゼルが自分を受け入れてくれるかもしれない。黄昏の紋章を宿し続けていられたかもしれない。
その思いは殺意のような視線となって、去りゆくサイアリーズを射る。
ギゼルの妄信的な崇拝を知った上で好き勝手に振舞うバカな女。王族という自覚を忘れた
かのような軽薄な発言と格好。何もかもがアレニアの癇に障る。
いっそ死んでしまえばいい。

「ふん、女の嫉妬ってのは怖いな」
「ン…ッ!バカに、してるのか…ッ」
夜の闇に紛れて、一つの塊が淫靡にうごめく。
「理解できないな。お前もギゼルを思いながら、なぜ俺を拒まん」
「それは、お前が…ああっ」
髪を振り乱し獣のように吠えるアレニアを背後から貫きながら、キルデリクは薄く笑う。
アレニアは力の抜けた体を冷たい床に押し付けつつ、尻だけを高く持ち上げてキルデリクを
受け入れている。キルデリクは荒い息を吐きつつ、激しくアレニアの中に猛った己を叩きつける。

いつからそうなったのか、きっかけは思い出せない。ただ、それが始まったのはおそらく
サイアリーズが戻ってきた時からのように思える。
ギゼルとの秘め事は、アレニアが口と手で処理するだけで、互いの裸すら見ていない。
気が向けば服の上から愛撫が加えられる程度。そして絶対の約束として、キスはしない。
ギゼルがサイアリーズに操を捧げているのは明らかだったが、それでも良かった。
あの人のために、あの人が喜ぶなら。我ながら愚かなことだと分かっている。それでも止まらない。
ギゼルに触れ、一瞬でも熱を感じることが出来ればそれだけでいい。
キルデリクはどこから知ったのか、その関係を嗅ぎつけ黙秘の代償に体を求めてきた。
「あ、ああっ、もうダメぇ!」
一際深く抉られ、アレニアは甲高い悲鳴を上げて崩れ落ちた。だがキルデリクは飽き足らず、
なおも激しく突いてくる。結合部からは粘り気のある液体がポタリポタリと垂れている。
これは決して強姦ではない。口では嫌がっていても、ギゼルとの秘め事で熱くなった体を
鎮めるには、もう自分で慰めるだけでは満足できないのだ。キルデリクは強引ではあるが
粗暴ではなかったし、体の相性は不思議と良かった。
…情事の後に泣きたくなるような後悔が押し寄せる以外は。
キルデリクは膝の裏を抱えてアレニアを持ち上げ、結合したまま激しく上下にゆすった。
「あぅ、あぁぅぅ…っ。やめてぇ、もう、おかしくなりそう…っ」
普段冷静なアレニアが狂ったように悶える様子を見ると、キルデリクは精を放ってもすぐまた
硬度を増していくのを感じていた。迸る精は衰えを知らず、何度も何度もアレニアの中に注ぎ込む。
その度に喘ぐアレニアだが、やがて頂点を迎えてグッタリと体を弛緩させた。そのまま床に
崩れ落ちると、アレニアは冷たい床の感触に覚醒し、散っている衣服をかき集めた。

情事の余韻に浸るまもなく去ろうとするアレニアを、キルデリクは呼び止めた。
「もうじき、反乱軍がやってくるだろう。お前に一つ、いいものをやる」
そういうと、キルデリクは懐から液体の入った小瓶を取り出した。
「これは肉体を限界まで引き出す薬だ。格段に強くなる。ただ、飲めば自制心を失い獣になり、
二度と人間には戻れまい。しかしこれでギゼルを逃がすことが出来るかもしれん」
「なぜ私に?」
「分からん。情が移った、とでもいうべきか。もっともこれは幸せになれる薬ではないがな」
そう言ってキルデリクは自嘲気味に笑い、闇夜に溶けた。

そして。
ソルファレナは落ちた。いや、正当な主のもとに戻ったと言うのが妥当なのだろう。

アレニアは、体中が避けるかのような激痛に、ふと意識を取り戻した。うっすらと瞳を開くと、
そこに写っているのは不気味に変色した己の腕だった。体中がどす黒く変色し、膨張している。
指一本動かすだけで体の中から突き上げるような激痛が走る。
これが、あの薬の効果か。
激痛を堪えて体を起こすと、すでに事切れたザハークが横たわっていた。目を見開き、激しい
苦悶の表情を浮かべている。それは遠くない自分の姿なのだろう。
…ギゼルさま!
アレニアは弾けるように思い立ち、いざりながら奥の部屋を目指した。奥にはギゼルがいる。
行かなければ。守らなければ…!

扉はすでに開いており、中には女王騎士長の正装を身にまとったギゼルが横たわっていた。
「ギゼルさまっ!」
痛みも忘れて駆け寄る。抱き起こすと、ギゼルは薄く目を開けた。
「サ…サイアリーズ、さま…。迎えに、き、て、くれ…」
ギゼルの焦点の合わない瞳から涙が溢れ、隈取の赤い染料と交じって、赤い涙がこぼれた。
力なくかざそうとする手を、アレニアは強く握り締めた。
最後まであの女には勝てなかったのか。その悔しさとは裏腹に、この人の最期を看取るのが
サイアリーズではなく自分であることに、アレニアは密かに優越感を味わった。
「ええ、サイアリーズです、ギゼルさま、迎えにきました。お一人では逝かせません」
「あり…がとう」
ぐいっと引き寄せられ、唇を塞がれた。アレニアの瞳から、大粒の涙がこぼれた。
「嬉しい…ギゼルさま」
乾いたギゼルの唇からは死の香がした。だがそんなことは構わない。
夢にまで見たギゼルとの一瞬。このまま溶け合って死んでいけたら、どんなに幸せだろう。
国の行く末も、己の誇りも何もいらない。ただこうしていられたら、どんなに…。
アレニアは迫り来る死の影に怯えることもなく、喜びに打ち震えた。

やがて突入してきた制圧隊が見たものは、きちんと胸の上で腕を組み、女王騎士長の威厳を
保つかのように横たわるギゼルと、片膝をついて臣下の礼を取ったまま息絶えているアレニアの
姿だった。
二人の顔はとても穏やかで、まるで幸せな夢を見ているようだった。
その場に居合わせた人は後にそう語ったという。

おわり

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