ケネス×ポーラ「愛があれば大丈夫?!」 著者:5_882様

 風光明媚な高台にある、ネイ島の宿屋。足を伸ばせばネコボルト温泉、鄙びた所が魅力の島。
大量発生したカズラ−を退治した黄門さまご一行…もとい、群島連合軍一同は、島民の精一杯のもてなしをありがたく頂戴していた。
 高台の広場に設けられた即席の宴会場。大時化の海並みに渦巻く怒号と喧騒と哄笑。その間を縫って、麗しき吟遊詩人の歌が華を添える。
無料で開放された宿屋には、次々と酔漢が運び込まれていった。あまり楽しくない仕事のはずなのに、宿の主人達は嬉しそうだ。
そんな中、功労者の一人であるケネスは、こっそりと酒宴を抜け出して、月夜の散歩としゃれ込んでいた
浮かれまくった仲間達に、どれだけ杯を重ねさせられたか。…主賓扱いだった我らが船長殿に、何もなければよいのだが。
高台の外れ、海を臨む崖。強めの酒で火照った頬を、心地よい風が撫でてゆく。
(随分遠くまで、来たものだな…。)故郷のラズリルは、まだ遠い。
 一度離れた故郷を、皇国の支配から開放するには成功したものの、群島諸国全体にはいまだ平和は訪れていない。
いつの間にやら群島全体を束ねる将となった良き親友を、放って帰るわけには行かない。
 あいつの濡れ衣を晴らすと決めたあの時から、とことんまでついて行くことに決めた。悲しい誤解が解けた今は、あいつを支えることが目的になった。なんでもかんでも一人で背負いがちなあいつを。
どれだけの荷を、自分が代わりに背負ってやれるのか想像もつかない。そもそも、背負う資格があるのかどうかも分からない。
だから今は、自分にできることをやるだけだ。きっと、悪い方向には向かわない…。
 心地よい風に吹かれながら、さまざまに思いをめぐらす。降り注ぐ月明かりの中、彼の目は遠き故郷を見据えていた。
――急に、目の前が暗くなった。ほっそりした手が、彼の目を塞いでいる。
「…?! だ、」
「…だれでしょう?」

聞き覚えのある声、忘れようのない声。森の葉ずれを思わせる、やわらかな声。そっと手を取り、ゆっくりと振り向く。
「……ポーラか。」
「だめですよケネス。答える前に振り向いては」
透けるような白い肌、柔らかな色の金髪、おっとりとした物腰のエルフの少女。普段物静かな彼女にしては、妙に陽気だ。
「涼みに来たのか? ここはいい風が吹いてくるぞ」
「涼みに? …そういうことにしておきましょう。あなたといられるなら」
ケネスの隣に立ち、ポーラは彼にぴったりと身を寄せる。逞しい腕と、しなやかな腕が絡み合い、頭はケネスの肩に乗せられた。あまりに自然な動作に、ケネスは呆気にとられた。
傍から見れば、仲睦まじい恋人同士みたいに見えるんだろうな、悪い気はしない、むしろこのまま…などと酔った頭で考えていたところ、著しく重大な発言があったことに気が付いた。
「…ポーラ? 今、なんて…」
「え?ですから、ケネスの言ったとおりにしておきましょうと…」
「違う! その次! なんだか重大かつ爆弾発言があった気がするんだが!!」
両肩をつかみ、思わず声を荒げるケネス。ポーラがびくりと身をすくませたのが、直接体に伝わる。目の前の彼女は、明らかに怯えていた。
「……あ、その、…すまない。飲みすぎたみたいだな…俺」
鷲掴みにした手を放し、顔を背ける。酔っているからって少々やりすぎた。さっきの思いがけず嬉しい一言もきっと聞き違いに…
「あなたといられるなら、と」
静寂を破る真摯な声。声量は小さいのに、耳と心を貫かれるような気がした。
「あなたといられるなら、確かにそう言いました。貴方が少々酔っているのは関係ありません、ケネス」
「……な、どうして……」突然の告白に、嬉しさよりも戸惑いが先立つ。目の前の少女が泣きそうな顔になった。
「いけませんか? 好きな人と一緒にいたい、と願うことは」
目も眩むような言葉。彼女の顔がまともに見られない。心臓はずっと早鐘のように打ち鳴らされている。
(夢、じゃ、ないよな…。俺、魔物にでも惑わされてるのか…?)
生来の慎重さが災いして、ケネスの口から余計な一言が漏れた。
「いや、そうじゃなくて、その……俺、ポーラはあいつのことが好きなんだとばっかり…」

「あいつ?…ああ、かわいい女の子の膝枕で寝ている、我らがリーダーのことですね?」
その光景を思い出したのだろう、くすりとポーラは笑った。月明かりに照らされた、その表情に目を奪われる。
「ひ、膝枕か…うらやましい…じゃなくて。あいつがラズリルを追い出されたとき、一緒に来てたから…」
「このままではいけないと思ったから。あんな形で、大切な仲間を失うのはとても嫌だったから。…それに、」
言葉を一度切って、ポーラは伏せていた顔を上げた。真っ直ぐな瞳がケネスを射る。続きの言葉が出るまでの数瞬が、永遠のように感じられる。
「…力になりたかった。全てを捨てて、彼と共に海に出る貴方の」
 彼の無実を最後の最後まで訴え続け、刑の撤回のために奔走していたケネス達は、当時の騎士団の中で完全に浮いてしまっていた。陰口も相当叩かれた。
――自分が正しいと思ったことに、力を尽くして何がいけない?
こそこそと悪口を言ったり、保身を進める手合いは、この一言で切り捨てた。まともに相手をする時間すら惜しかった。
正しいと思うもののために、信じているもののために自分の全力を尽くす。それがケネスの生き方だった。
 だから、彼とともに海に出るのにも、ためらいはなかった。それが今自分のすべき事だと思ったから。
唯一の計算違いは、そう考えた人間がもう一人いたこと。ましてやその人は、憎からず想っていた相手だったのだから−
「貴方達を悪く言う人と、私はともに戦えないと思った。嫉妬や憶測から生まれた悪意を、さも事実のように語るような人々とは」
当時のことを思い出したのか、ポーラの顔に悲しみと怒りが宿る。
「ポーラ…」
「…今まで仲間だった人に、どうしてあんな言葉が吐けるのですか? 友達を庇うことは、そんなにおかしなことですか? 」
「俺は気にしちゃいないさ、もう過ぎたことだから…」
「静かに刑を受け入れた彼の気持ちや、庇いつづけた貴方の気持ちを想像しようともしないで…!! どうして…?!」
「ポーラ! いいんだ、もういいんだ…!」
珍しく錯乱するポーラ。抱きしめた彼女の頬には、流れつづける涙。風と月明かりが彼女を静めるまで、ケネスはじっと待った。ほんのりと果実酒の香りがする。
(ポーラも酔ってるんだな。だから…)だいぶ唐突ではあったが、彼女の告白は嬉しいものだった。

 ラズリルを一緒に脱出する前からの、気の合う仲間の一人ではあった。騎士団に入ろうとした理由は知らないが、人間社会の中で相当苦労してきたのは良く分かった。
我慢して、ひっそりと、目立たないように。悪い意味で、人との衝突を避けるような振る舞いが、出会った頃の彼女には顕著だった。
そのせいで誤解が生まれることもあった。異種族というだけで、好奇や嫌悪の視線を向けるものもいた。
 幸いにも、よき親友のジュエルの影響――『悪影響』などという口の悪いのもいるが――で、彼女は変わっていった。
自分の意見を口にすることや、意志を貫くことを怖がらなくなった。ゆるぎない芯の強さと、春の海のような穏やかさ。短所は見事に長所に転化し、彼女を輝かせた。
――自分が、その輝きから目が離せなくなっていたのは、何時の頃からだったか。
「…俺は、自分のやるべきことをやってただけだ。無実の罪に問われる奴を、放って置くわけにはいかないだろう?
 だがあんな状況じゃ、騎士団にいるままでは限界だと思った。だから一緒に行っただけさ、大した事じゃない」
「……自分も、帰る場所をなくしてしまうのに……?」
「無実を証明して、ラズリルに帰る。いつもそうやって励ましあってただろ? 気休めで言ったつもりはなかった、一度も。」
「…そう、でしたね。忘れるところでした」
 顔を上げる。涙で濡れた瞳に、愛しい人が映る。ずっと一緒にいたけれど、こんなに近くで顔を見るなんてできなかった。
友情に厚く、、間違いを正す事を恐れない彼の姿は眩しかった。自分には真似できない、なんて思ってもいた。
親友のおかげで自分は変われたけれど、嫌われたくない、失敗したらどうしよう。昔の自分が顔を出し、はじめの一歩が踏み出せなかった。
さあ、言葉を伝えなくては。酒精の魔法が解けてしまう前に、全てを伝えなくては。
「貴方が、好き、…です。勇敢で、優しい、貴方が。」一言一言に、心を込めて。
「…ありがとう。俺も、君が、…好きだ。」珍しく、彼の顔が真っ赤だ。きっと自分もこんな顔色になってるんだろう。
大きな満月の元、向き合う瞳がお互いを捕らえた。もっと近くに、もっと側にいたい。――月光の魔力は、二人を次の段階に進ませようとしていた。

 愛しい人の、頬の涙の跡に気づき、ケネスはそっと手でぬぐった。その手をとり、ポーラは口付けて頬擦りする。
「暖かいですね、ケネスは。ずっと触れていたくなってしまいます」
「…俺もだよ、ポーラ。もしも君が許してくれるなら…」
ポーラの両手を取って、自分の両手で包み込むように握り締める。淡い金色の瞳を見つめて、精一杯言葉を紡ぐ。全身の勇気を総動員して。
「今夜ずっと君に触れていたい。一時間でも一晩でも一日でも一生でも、君の許す限り一番近くにいたい」
止まらない心、普段の彼にはない性急さ。気おされたかのように、ポーラの瞳が一瞬揺らぐ。しかし、二人の思いが一つになるまで、そう時間はかからなかった。
「えっと。…お手柔らかに、お願いしますね?」降り注ぐ月光の中、ほんのりと目元を染めてポーラが答える。
(…………!!)とどめの一撃、完敗、撃沈、理性の崩壊。そしてエンジン全開。今後の…いや、今夜の戦略が一瞬で組みあがる。
「ポーラ、ちょっとごめん。…よっと!」
「え? あ…きゃっ! 」
膝の下と脇の下に手を入れ、ポーラを一気に抱え上げる。俗に言う「お姫様だっこ」の体勢だ。
「あ、あの、ケネス?いったいなにを…」夢から覚めたような口調で、ポーラが慌てる。
「大丈夫。俺の言う通りにしてて…」
耳もとでそっと囁いて、そのまま耳に口付ける。真っ赤になる恋人を抱えつつ、暴走特急の行く末や如何に。

宿の主人は、屋根裏の小部屋に二人を案内した。ベッドと小さな机・戸棚と、姿見だけでいっぱいになるような小さな部屋。
「気分が悪くなった女の子を介抱したい」の一言が利いたらしい。何時もは従業員が寝ているらしい部屋を、特別に貸してくれた。
「本当に、助かります。…どうも、宴会で飲みすぎたらしくて」
ぐったりと目を閉じたポーラを、一つきりのベッドの上にそっと横たえる。枕元の椅子に、ケネスは腰掛けた。

「そいつは大変だ。薬、お持ちしましょうか?」
「いえ、おかまいなく。一晩寝れば大丈夫だと思いますから。本当に、ありがとうございます。それでは…」
ドアの閉まる音。鍵のかかる、小さな金属音。遠ざかってゆく主人の足音。よく聞き取れないくらい小さくなった辺りで…
「…なんだか、申し訳ないですね。私たちのために」ぐったりとしていたはずのポーラが、明瞭な声で話し出す。
「いいさ、使わないとかえってよくないって言ってたからな。…まさか本当にうまくいくとは…」
大切な今夜のために、一かばちかケネスは賭けに出た。彼女と自分の願いを叶えるために、ベッド一つを確保するのが急務となったから。
(まああれだ、非常事態って奴だったからだ、うん。ポーラが飲みすぎてるのも嘘じゃないんだから)
 やはりどこかで良心が咎めるらしく、自分自身にケネスは必死で言い訳していた。くい、と袖を引かれ、ベッドに上半身を起こしたポーラと目が合った。
「…ケネス?」
「あ、ああ。ちょっと待って」
念のために宴会中も装備していた部分鎧を外していく。ブーツを脱ぎ、剣も外した。一つ深呼吸して、寝台の上の彼女に覆い被さるような体勢をとった。
「…お待たせ。」そのまま、軽くキス。ふわふわの甘い感触を惜しみつつ、一度唇を離した。
金色の目がゆらゆら揺れる。彼女の瞳には、自分はどのように映っているのだろう。
深く抱きしめて、今度は長いキス。少し開いた唇から、舌先をするりと進入させる。軽くたじろぐポーラの体をしっかり抱きしめ、口の中をじっくり愛撫する。
「ん、ん…」
甘い声にこっそり目を開けると、彼女の顔が間近にある。何かに耐えているような表情をもっと乱したくなって、服の上から胸に触れた。
「んっ…」どうにも恥ずかしいらしく、ケネスの手から必死に体を離そうとする。耳朶を軽く噛んで、びっくりさせたところで一言。
「駄・目。俺に任せて」
片手と胸で押さえ込んで、抵抗なんてさせない。胸だけでなく、背中・脇腹・腿などなど。手当たり次第に触って、彼女の呼吸を乱すことに全力を尽くす。
「う…うう…んん、はぁ…はああ、やっ…」
たまらず口から漏れた、蜂蜜のように甘い声。もっと甘い声が欲しいから、もっと先に進もうと決めた。
抱き起こして、一気に服を脱がせる。そのまま下着も剥ぎ取って、さらさらしたシーツに横たえる。

透き通るような白い肌、乱れた髪。軽い快感の余韻に浸る愛らしい顔。月明かりが差し込む部屋の中、ポーラの姿態は幻想的ですらあった。
「…綺麗だ。すごく」人並みな感想しか出てこない。語彙の少なさがもどかしい。どれだけの言葉を尽くしても、この美しさはは語れない気がした。
「…ずるい。ケネスも…」恥ずかしくなったらしく、半身を起こしてポーラがしなだれかかった。囁く声は耳を撫で、
一枚一枚、落ちてゆく服。細い指がケネスの体をかすめ、その度に裸に近づいていく。
「なんだかくすぐったいな。わざとか?」
「わかってしまいました?…仕返しです。とっても恥ずかしいのに、じっと私を見ているから…」
「見とれてたんだ。あんまりきれいだから」下着一枚になったところで、ポーラの手が止まった。
「…男の方って、本当にこんなふうになるんですね」
下着の上からでも、はっきりと形の分かるケネスの分身。もうちょっと控えめになれないもんか、おい。
「…まあな。こういう場合、この状態じゃないと使い物にならないし…って、ポーラ、ちょっ…!!」
会話しながらも最後の一枚を床に落とし、ストローでも咥えるかのような躊躇のなさでポーラは口淫を始めた。
 ひやりとする床にひざまづき、ベッドに腰掛ける状態になったケネスの股間に顔を埋める。長い耳だけがひょこりと飛び出し、顔の上下に合わせてゆらゆらと揺れる。
大きく膨らんだ先端部が咥えられ、そのままちゅうっと吸い上げられる。可憐な唇にゆっくりと、己が分身が飲み込まれていく様は、なんだか自慰の時の妄想でも見せられているかのようだ。
ちゅぷ、ちゅぷ…ちゅるる。ちゅっ、ちゅっ…月光の差し込む部屋の空気に、淫靡な音が融けては消える。
「う…あ…くっ…ポーラ、…もっと、セーブして欲しいんだが…」
「ん…駄目です。私に任せてください。…もっともっと、気持ち良くなって…」
一瞬顔が上がり、唇と先端との間に唾液の糸が光る。獲物を捕らえて放さない、蜘蛛の糸のように。
清楚な美貌の中に、妖艶さが垣間見えた気がして、ますます興奮する。
――先ほどの酒宴にて、女性としての諸先輩方より『男性との肉体的恋愛に関する経験則とご高説』を賜わった。色とりどりの顔色を浮かべつつも、その場にいた女子メンバーはしっかりと知識を蓄えた。
まさか、すぐに実践することになろうとは…。

 ケネスの気持ち良さそうなポイントを確認しながら、ポーラはゆっくりと顔を上下させていた。ぎこちないのはご愛嬌、止まらない愛情でカバー。
時には舌先で先端を穿ったり、横笛でも吹くようにくわえてみたり。自分の手でいじってみることも忘れない。
くちゅくちゅ、くちゃくちゃといやらしい音は止まらない。
純粋に、ケネスが気持ちよくなるためには自分がどうしたら良いかを、ポーラは一生懸命探っていた。そして…
「く、くっ…うっ、うぐっ…ポーラ、ポーラ、ちょっと、本当に、やば、ぃ…うおっ!!」
「?! ケネス?!」思わず顔を上げる。その顔に、白い飛沫が勢いよく飛びちった。反射的に目を閉じた、ポーラの顔と手に、たっぷりとと青臭い液体が飛び散った。
何が起こったのかとっさに理解できず、呆然とするポーラの肩に、荒い息をつく恋人の顔が乗る。同じく白い体液塗れの彼の分身は、予想以上の攻撃に「一閃」を喰らっていた。
「…だから、セーブしろって…俺、しばらくぶりだったし…いきなりそうくるから…」
「……………ええと、もしかして、私…気持ちよくさせすぎてしまいました?」
「正解。……特別賞として」息を整えながら、手元にあったタオルでポーラの体を拭く。ぐったりしている我が分身も拭いて、腿を跨がせるようにしてポーラと向き合う。
「君にも、とことん気持ちよくなってもらう。…簡単には眠らせない」
返事を待たずに、胸の頂点に吸い付いた。跳ね上がる体を押さえ込んで、もう片方の胸も揉む。両方の突起が固くなるまで、そう時間はかからなかった。
「きゃあっ! あ、ああ…ああっ! はあっ…!」
意外に弾力のある膨らみ。舌先と指先で、二つの頂点をとことん苛めた。短く甘い叫びが連続して、二人だけの部屋に響く。
「はあ、うん、ん、んん、うんっ! はっ、や、やああああ…。」
「…そんな声、初めて聞くな」
「……!! あたりまえでしょう! もう! いぁっ、は、はあああ…んん!」
「怒ってる声も、笑ってる声も、泣いてる声も、気持ち良さそうな声も。全部まとめて可愛い」
優美な長い耳に、ゆっくり囁く。その声にまで感じているらしく、切なげな吐息が漏れる。

「でも…今は、気持ち良さそうな声がたくさん欲しい。だからもっと、俺を感じて…」
耳朶、頬、首筋、鎖骨、胸。抱き締めて、密着して、たくさん口付けて、背中もくすぐって。
一々蕩けるようなため息と、ひくひくと体の震えが伝わってくるのがたまらなくいとおしい。
 変化に先に気づいたのは、ポーラのほうだった。彼の腿に跨っているから、彼女の秘所は腿にぴったりと押し付けられる格好になっている。
その部分がたまらなく熱い。なんだか湿っている気がする。というか、『濡れて』いる気がする。
気になりだせば止まらない。彼の愛撫に身を任せ、ゆらゆら体が揺れるたびにそこから鋭い刺激がやってくる。
「んっ! ああ、はあっ! あっ、あっ、ああっ…」
「……ポーラ、ちょっと我慢して…」
抗議の声をあげる間も無く、今度は後ろから抱き締められる格好になった。素早く閉じようとした両足は、ケネスの両足を跨いで大きく開かされる。
「ケネス、お願いですから、やめて…恥ずかしい…」
「さっきの体勢だと、できないことがあるって気づいたんだ。…大切なところが可愛がれない」
「!!! ケネス、待って、お願い…ああっ! 」
――ぴちゃ、くちゅり。抵抗をかいくぐり、秘所に辿りついた指先に、とろとろとした感触がまとわりつく。
「…こんなに、なってたのか…」ポーラの全身に、痺れるような快感が広がる。丹念に丹念に、秘所を愛撫する指先。充血して、ふっくらとした感触の花弁をかき分け、更に周囲を探る。
「ひあ、あ、は、お願い、です、そんなこと、んっ! 言わない、で…」
柔らかな突起を探り当てたので、そっと指で撫でてみる。一際大きな嬌声が漏れたのに気を良くして、ゆっくり何度も撫でてみる。
「ぁ、はああ、は、あぁん、っっ…ケネス、もう、やめて…ひあっ!」
「わかった、やめる」
拍子抜けするくらいあっさりと、指先が止まった。汗ばむ体をベッドに投げ出し、ポーラは一息ついた。いや、つこうとした。
仰向けにされて、足は開かされて、ケネスの顔が真正面にある。ちゅっと唇を吸われて、にっこり笑顔で彼は一言。
「…でも、さっきのお返しはさせてもらうぞ」逞しい手で膝を一杯に割り開かれて、彼の顔が秘所へ降りてゆく。ちゅ、と敏感な突起が吸われた。

「あああ! だめです! そんな…ところ…はあっ!」
「さっき君もやってただろう? これでおあいこ。…じゃないな、まだ駄目だ」
とくとくと蜜が流れ出す泉に、ゆっくりと指が差し込まれた。思っていたよりもスムーズに指は飲み込まれ、内壁に刺激を与える。
じゅるじゅると突起や淫らな蜜を吸い上げる音が大きく響き、ポーラは今すぐに『静かなる湖』を発動したい衝動に駆られた。
もっとも、快感に脳内が完全支配されたこの状況で、それだけの大魔法に集中するなんて無理な相談ではあったが。
「…駄目?…なんで…んあっ」半泣きになりながら、それでもポーラが問い掛けた。
「まだ君に、上り詰めてもらってないから」慎ましい突起が甘噛みされた。その刺激がきっかけになり、ポーラの体が大きく震えた。
「ぃあああああ! あああ! ぁああああああああああああ!!」
嬌声というより絶叫。叫びが響く間、彼女の体は何度も震えた。荒い息をつく体を、落ち着くまでケネスは何度も撫でた。
「…すまん、ちょっとやりすぎた」
「はぁ、は、…意地悪なんですね、案外」ちょっぴり拗ねた声。可愛い…と呆けそうになる自分を押さえて、念のために聞いてみる。
「…嫌いになったか?」
「いいえ。大好き」今度はポーラから、唇が押し付けられた。頬やら胸やら、手当たり次第に。嬉しさに放心状態になって、ちょっとの間されるがままになってから。
――もう一度、仰向けになったポーラにのしかかる。
「…痛かったり嫌だったりしたら、我慢しないでちゃんと言うんだぞ」
「はい。でも…こういう我慢は、悪いことじゃない気がします」
「それでも、だ。俺が『意地悪』なのはよーくわかったろう? …やり過ぎて、君を傷つけるのはいやだ」
「大丈夫ですよ、私と貴方なら。…ね? 」左手がきゅっと握られた。なんでそんな笑顔ができるんだ。その『ね?』は反則だ…。
 固くなったものを潤い豊かな入口にあてがう。ぐ、と腰を進めると、先端だけが潜り込んだ。左手に爪が食い込む。
「ポーラ? 痛かったら…」
「…いた、い、です。でも、平気…」
全くもって平気そうじゃないが、彼女の意思を尊重することに決めた。…きっと俺達なら、『大丈夫』だ。
ゆっくりゆっくりと、体内へと自分自身を納めてゆく。とんでもなくきつくて狭い。進行するのも一苦労だ。

蕩けるような快感の中、一番最後まで怒張が収まると、たまらずポーラが抱きついた。
「…ほら、『大丈夫』でしょう?」痛みを堪えるような表情で、愛しい人は微笑んだ。
「ああ、その通りだな。…ちょっと動くよ」
ゆっくりと腰を引いて、もう一度奥まで進む。繰り返される痛みに気を失いそうになったが、ポーラは必死で耐えた。
耐えているうちに、先ほどの愛撫で目覚めた快感が甦ってきた。痛みは薄れ、再び快感が体を支配する。
「…ん…」わずかな変化を聞き逃がさず、少しだけ抜き差しを速めた。声だけでなく、体にも顕著な反応があった。
「…ぁあ…んん…は…はぁ…」ちゅく、ちゅく…秘所から再び、粘着質な音が漏れてくる。ケネスは沸騰しつづける欲望のままに腰を動かした。
「あ、ぁあ、はああ、はっ…ケネスも、気持ち良いのですか…? 」
「気持ち…っ! よくなけ…りゃ! こんな、に、動かない…くっ! もう、痛くない、か…?」
「ええ、もう、へ…平気…ぁあっ!」
両手でケネスに抱きついて、ぴったりと腰を合わせてくる。彼女の中は非常に狭く、全身が吸い込まれそうだった。
 快感に震える華のかんばせ。それを乱しているのは、俺。普段の彼女とのギャップに、ケネス自身がますます固くなる。
剛直は恋人の膣内をえぐり、擦り、突き上げ、ますます淫らに染めあげる。
「んっ! あ、ああ、ケネス、ケネス…! 私、わたし、もう…! 」
「俺も…だ! ポーラ、一緒に…!!」
悲鳴のような声があがる。絶頂が近づくにつれて、二人の体が震えだす。力の限り腰を動かし、顔中にキスをする。
真っ白な手が頬にかかり、熱烈に唇が合わさった。舌が激しく絡み合い、狂熱が一段と燃え盛る。
「んん、ふあ、ああ、ああ、ケネス、ケネス! ああああっ!!」恋人の名が呼ばれた瞬間、ぎゅうっと締まる入口。
「――!!! うっ、うおおおおおっ!!ポーラぁっ!! 」
一際強く腰が打ち込まれ、剛直が体内で勢いよく爆ぜた。「一閃」されたときの比ではない量の白濁液が注ぎ込まれ、逆流した分がシーツに薄赤いシミを作る。
恍惚に震え、ケネスを抱き締めて放さなかった繊手がゆっくり解ける。そっと分身を抜き出し、余韻に浸る恋人の隣に倒れこんだ。

…おずおずと、でもぴったりと寄せられる愛しい人の裸体。どうにか呼吸を整えて、横になったまま向き合った。
「…大丈夫か?」なんだか照れくさくて、見当違いな気遣いが出てしまう。ついでにそっと抱き締めた。
「ええ。…でも、ちょっと心配なことがあって…」
勢いあまって中で出しといて何だが、『危険日』だの『妊娠』だのという単語が脳内を駆け巡る。
…俺も男だ。ほんのちょっとばかし酒の勢いがあったとはいえ、こうなった以上腹を括ろう。
「…心配なことって? 」
「いえ、あの…明日の朝、どうしましょう? この宿にも、この近辺にも、たくさん人…いますよね? しかも知り合いばかり」
普段通りの冷静なポーラが、淡々と事実を告げる。…そこまでは考えてなかった。
「誰にも見つからないように船まで帰るのは、大分酷だな。『手鏡』でもあれば話は別だが…」
「いつもどおり、彼が持っていますからね。ここから出たら、歩いて下まで行って、船に乗せてもらうしかありません」
その状況を想像して、恥ずかしそうにポーラがうつむく。我らが連合軍には、噂好きの子雀達・下世話な話が大好物の海賊達・おまけに新聞屋までいるのだから、このことが広まるまで時間はかからない。
…しばらくの間、祝福という名のからかいに耐えなければならない日々が続くだろう。
(でも、ま、いいか…)うつむいたままの少女を抱き締め、にっこり笑ってこう答えた。
「大丈夫だよ、俺と君なら…な?」
甘い甘いキスの後、ゆっくりと二人は眠りに落ちていった。

おまけ

♪girls in trouble!! GEN-SUI Four〜♪
「うっひゃあ、二人とも大胆すぎ!! 告白からいきなりそこまでいっちゃうぅ?!」
「…少々酔っていたとはいえ、ちょっと急ぎすぎました。でも、後悔はしていません(にっこり)」
「あーも−幸せ者は勝手にしてて。…ところで、随分酔ってたみたいだけど、どんだけ飲んだの?」
「みなさんが美味しい果実酒をつぎつぎ勧めてくださったので…ええと、
 杏酒、梅酒、桃香酒、茉莉花酒、苺酒、サンザシ酒、檸檬酒、白葡萄酒と赤葡萄酒。
 珍しいものだと菊花酒、苔桃酒、サルナシ酒、カナカン産のミカン酒やユズ酒もあったと思います」
「…うわーすごー…もちろん、全部一杯ずつよね? 」
「いえ、どれも美味しかったので…一瓶ずつ。あ、杏酒と梅酒と赤白の葡萄酒は二瓶ずついただきました。
 もう少し飲みたかったのですが、まわりの皆さんに止められて…」
「…そりゃ止めるわ…なんであの程度しか酔わないのよ…」
「彼女の母もまた酒豪だったそうだ。人間との飲み比べで勝ってしまい、『エルフのイメージが崩れる』と言われて村を追い出されたそうだ…」
「…ポーラ酔い潰せるような人間は、なんとなくだけど、あと160年ちょっとしないと出てきそうにない気がする…」
♪It's Punishment Time! GEN-SUI Four〜♪

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