ロイ×フェイレン 著者:8_291様

「別に無理してついてこなくていいんだぜ。お前らがやりたいことがあるんなら…。」
「やりたいことはロイの手助けをすることだよ。」
「そうそう。兄貴の言うとおりあたしたちは自分のやりたいようにしてるんだから。」

 オレたちは、いや…オレはあのファレナでの戦いの後しばらくやりたいことを見失っていた。成り行きとはいえ王子さんの影武者を勤めたことは、ただのチンピラだったオレにとっては昔のチンピラ時代より命が危険に晒される事があるとはいえ刺激的な毎日だった。
 だからこそ、終わってからの先がなにも見えなかった。さらに追い討ちをかけるように失恋もした。どうあがいても王子さん一筋なリオンがオレのようなやつに振り向く事はないと思っていたが、かなり必死になっていたからその反動は大きかった…。
 まあ、思ったよりすぐに割り切れたのはリオンの相手が王子さんだったからかな。一緒に戦ってみて、はじめオレが思っていた世間知らずのボンボンなんかではなく、すげぇヤツだってこと痛感させられた。だからこそ、あんなに必死になってアプローチしたリオンを王子さんに任せてもいいかと思えた。あいつら、旅に出る前には恋人みたいにはなってなかったらしいが時間の問題だろ。

 オレはしばらくなんもする気がしなかったが、ある日フェイロンとフェイレンに気晴らしに連れて行ってもらった劇団の演劇を見て、なんか来るものがあったんだよね。そういえば何人かがオレが王子さんの影武者をしている時は生き生きしてるって言ってたっけ。まぁ、その時は否定したんだけど思い返してみるとそんな気がしないでもない。俳優みたいに何かを演じることがオレの天職かも、そう思ってその劇団の団長に入れてもらったってわけ。
 つーわけで、今はその劇団はもともと北の大陸にいたのがファレナに来たらしく、オレ達はそれについて行って今は北の大陸を転々としてる。オレは俳優見習い、フェイロンは大道具係、フェイレンは劇団の雑務とか家事を手伝ってたりして毎日を過ごしてる。二人には無理してついてこなくていいって言ったんだが結局あん時、オレが軍に参加した時と同じようについてきた。…なんだかんだ言ってあの二人には感謝してる。
 ガキの頃から身を寄せ合って生きてきた仲間の二人、あいつ等がいつでもついてきてくれることがオレにとっては心の支えになっている事を自覚したのはいつ頃からだろうか?

「相変わらず、よく食べるよな…」
「ん?そう?」
 オレは隣で食事にがっつくフェイロンを見てそう呟いた。軽くオレの二倍ぐらいは食べてる。レツオウさんの飯が食えた頃はもっと食っていたが相変わらず食う…。
「ロイもいっぱい食べないと、ほら腹が減っては…」
「はいはい、前にも聞いたよそれは…」
「だから断るって言ってんでしょ!」
 急に和やかな食堂に似つかわしくない怒声が響きわたる。
「ねえ、ロイ…」
「ったく…」
 イライラしながらオレは立ち上がる。そして、優男に絡まれてるフェイレンのもとに向かった。

「いいじゃない、俺達に付き合ってくれたってねえ。」
「そうそう、君暇なんでしょ?オレ達と一緒に飯でも食おうよ。」
「だから、連れがいるって…」
「おい」
 オレが声をかけると絡んでる男はオレの方を向いて睨んできた。
「ロイ!兄貴!」
「なんだ、ガキが。俺達は見てのとおり暇じゃないんだよ、あっちいきな!」
「いや、オレらの連れなんだけどそいつ。嫌がってんだからやめてくんない?」
 そういってオレはヤツラを睨みつける。イライラもかなりキてる。周りも、なにやらざわめきはじめてきた。
「おい…」
「ちっ…」
 ヤツラはバツが悪くなったのかこそこそと去って行った。ヤツラを一瞥して、オレはフェイレンを見る。なんか顔が赤いのは気のせいだろうか?まぁ、とりあえず…
「ほら、フェイレン。飯食いに行くぞ。」
「まだ食べてる途中だから。早く行こう。」
「あ…うん…。ありがと、ロイ……あと兄貴も…」
 妙にしおらしくなったフェイレンを連れてオレらはテーブルに向かった。

 フェイレンのヤツが男に絡まれるのは結構ある。なんせフェイレンは王子さんの軍にいた時も美少女なんて言われてたぐらいだ。なんであいつに声をかけてくるヤツはいっぱいいる…。
 前は本人が嫌がってるから追っ払うみたいな感じだったが、今はなぜかオレもイライラするから追っ払うって感じだ。はぁ…、なんとなくオレがイライラする原因は分かっている…。けどなぁ…。

「ご苦労さん。今日はもう上がっていいよ。」
「ありがとうございます!」
 あたしは、そう言われてロイと兄貴が先に行っているであろう町の食堂に向かった。二人が様子を見に来てくれたが、待たせると悪いから先に行ってもらってる。食事の時間はロイと話せる貴重な時間だ。最近はロイもあたしも兄貴もお互いにやる事があって、なかなか一緒の時間をとる事ができない。その中で、顔をあわせられる食事の時間はあたしにとって楽しみだ。

「よう、やっと終わったか」
「ロイ!どうしたの?」
 普段なら夜の稽古に備えて早めにご飯を食べに行くのにロイがそこにいた。
「ん…、いや、この町にきてから前に比べてお前が絡まれやすくなってるからな。ちょっと心配になって…な…。」
「ロイ…」
 あたしは嬉しくなってロイに飛び付きたくなった。でも、そんなことして嫌がられたら…そう思うとできなかった。
「ほら!さっさと行くぞ!オレもあんま時間ないんだから!」
「…うん!いこ!」

「また会ったね。…ってガキも一緒かよ…」
 食堂に行く途中、人通りの少ない通り道で昼間フェイレンに絡んできたヤツラがまたいた。
「ロイ…」
「はぁ…、あんたもしつこいなぁ。いい加減にしろよ!昼間でこいつが嫌がってんのは分かっただろ!」
 マジでイライラしてきたオレは声を荒げてそいつに突っかかった。
「ああ、分かったよ…だからさ…昼間のお詫びもかねてね…」
「…フェイレン、離れてろ。」
 なんかヤバイ雰囲気を感じたオレは護身用に持ってた連結式三節棍に手をかけた。
「ロイ!後ろ!」
「なっ!」
 後ろを見るともう一人の男が俺に向かって棍棒を振り下ろそうとしてた。
「ちっ」
 ガッ、と鈍い音がする。頭に直撃は避けたが左肩をやられた。痛みに気をとられかけたが耐えてすぐさま相手の腹に蹴りを入れる。さらに九の字になったヤツの顎を思い切り蹴り上げた。
「ぐぁ…。」
「ってぇ〜…。くそっ!やってくれんじゃねえか!」
「ロイ、大丈夫!」
 フェイレンがオレに駆け寄ってくる。
「へぇ〜、なかなかやるじゃない。ただのガキかと思ったら。」
 ヤツが汚く笑いかけてくる。当たり前だ、こちとら王子さんの影武者やチンピラやってたんだ。こんぐらいたいしたことねぇぜ。…いてぇけど。
「だけど…おいてめぇら、出てきていいぞ。」
 どうやらまだ仲間が潜んでいたらしい。物陰から一人…二人……五人か…。まずいな。
「なっ…、この卑怯者!恥ずかしくないの!」
「へへ、お嬢ちゃんがおとなしく俺らと付き合うってんならガキは逃がしてやってもいいぜ。」
 ばっかじゃねえの、そんなことする訳ねえだろ。心の中で毒づきながら
「へっ、寝言は寝てから言いやがれ。」
「てめぇ…」
 オレは連結を合わせ棍を構える。さらに隣で身構えてるフェイレンにヤツラに聞こえないよう話しかける。(フェイレン、武器は持ってないよな)(え…、うん。)(オレが気をひきつけるから町に向かって行け。んでフェイロンや町のヤツラを呼んできてくれ)(そんな…ロイ!あたしも残るよ!武器はなくても紋章が…)(いいから、こんな多人数じゃ武器をもってねぇお前をかばいながら戦うのはきつい。だから助けを呼んできてくれ。分かったな。)(ロイ…でも…)(あ〜、もう、オレのことは心配すんな!いいな。…んじゃいくぜ!)
「ほら、かかって来いよ!それとも怖くなったのか?ハハッ、大人数で来てそりゃ世話ねえな!」
 オレは思いっきりヤツラを挑発した。…むかついてるのか、あっけなくヤツラは乗っかってきた。
「てめえ…、おい!女はあとだ!まずこのをガキをボコるぞ!」
 ヤツラが俺に向かってくる…俺にしか注意が向いてない。今だ!
「フェイレン、走れ!」
 俺の隣にいたフェイレンがヤツラの間をすり抜けて素早く走り抜ける。よし、うまくいった!
「な…。あの女っ!」
「オラ!よそ見してんじゃねえよ!」
 ゴッ
「がはっ…。」
 フェイレンの方を向いた男の首筋に棍を叩きつけ、気絶させる。さらに他のヤツラが一瞬驚いた隙に、囲まれた円の中から抜ける。
「はい、一丁上がりっと。」
「どこまでもコケにしやがって…。このガキ!」
 後ろを取られないよう壁を背にして再び構えなおす。連結は外さずに戦った方がいいな。棍の方が片手でも戦いやすい…。はぁ…ついてねぇなぁ。だけどフェイレンを逃がせて良かったぜ。へっ、後はどうにでもなりやがれ!

 あの後あたしは全力で町の食堂に向かって走った。そこでご飯を食べてた兄貴にロイの事を伝えると、顔色を変えてすぐに行こうと言った。他にも手伝ってくれると申し出てくれた人を連れてロイのいた場所に向かったけど…。

「ロイ…。っロイ!」
 そこには倒れてるロイと何人かのびていた男がいた。
「ロイ!しっかりして!ロイ」
 ロイは気絶していた。いろんなとこをなぐられたのか痣があちこちにできてた。ごめん…ごめんロイ!あたしのせいでこんなに殴られて…いたい思いして…。
「ロイ…。うっ…ぐす…ごめ…ん…ね」
 涙が止まらなかった。頬を伝った涙がロイに落ちる。
「…フェイレン、この中の誰かとロイを町のお医者さんのところに連れてって。後すいませんが何人かボクの手伝いをしてくれませんか。」
 いつもののほほんとした兄貴の声じゃなかった。
「兄貴…」
「…そこにのびてる人をたたき起こして事情を吐かせる。逃げたやつがいるなら許さない…。ロイをこんなにするなんて!」

 あたしはあの後、町の人に手伝ってもらってロイを医者のところまで連れて行った。騒ぎを聞いて団長や劇団の人が来てくれた。結局あの後、町の警備の人がきてくれたみたいで取調べは自分達がやる…とのことらしい。自分でロイの恨みを晴らすつもりだった兄貴はなかなか納得できなかったらしいが、団長に説得された。今は私と一緒に病室の前の廊下でロイが目覚めるのを待ってる。団長達には待ってもらうのも悪いから、劇団のテントに戻ってもらった。
「フェイレン…ロイの様子は…」
「命には別状はないみたい…。だけど…そんなの関係ない!あたしの…あたしのせいで…。」
 さっきから自分を責めることしかできなかった…。助けになりたい、そう思ってロイに付いてきたのに結局あたしは迷惑かけてる…。自分が…自分が許せなかった。
「ごめん…ロイ…。ごめんね…。」

「ん…いてて…」
 意識が覚醒すると同時に体のあちこちから痛みが襲ってきた。ああ…、結局三人ぐらいぶっ倒してからボコられたんだっけか…。ここは…、なんか薬のにおいがするな。病院か?
「気が付いたか…」
 町の医者のおっさんが俺に話しかけてきた。おっさんの話によると気絶したオレをフェイレン達が運んできたという事、骨まではやられてないだろうけど暫くは安静にしておかなければならないという事などなど。
「左肩はひどくやられてるがそれ以外はすぐになおるだろう。」
「ああ…すまねぇ…。」
 ぶっきらぼうだが、腕は確かだという町の評判の聞いたことはある。オレは素直に礼を言った。
「ちょっと待ってな、外で待ってるやつらがいるから。お前の連れらしいが帰っていいと言ったのに聞かないからな。目を覚ましたら会いたいらしいから呼んできていいか?」
「ああ、別にかまわないぜ。」

「ロイ…ごめんね…」
 さっきからフェイレンはこんな調子だ。いつもは少し男勝りなくらい元気なのにすっかりしょぼくれてる。
 フェイロンともさっき話したが、あいつは団長のとこにオレが起きた事を報告に行くらしく出て行った。医者のおっさんも他の患者がいるからと部屋をすぐに出て行った。つーことでこの緊急用の医務室には、オレとフェイレンしかいない…。やべぇな…。前に怪我した時は、怒りつつもしょうがないな、みたいな反応だったけど…。気まずい…。
「…なぁ、だからお前のせいじゃねぇよ。だいたいお前が助けを呼んできてくれなかったらもっとひどい怪我になってたかもしれないんだぜ?」
「でもっ!」
 フェイレンが顔を上げて俺を見た。
「あたし、ロイを助けたいと思って付いてきたのに…。あんまり手助けできないのに…こうやって逆に助けられて…だから…だ…から…」
「だぁ〜!泣くなよ!」
 いきなり堰を切ったように泣きはじめたフェイレンにオレは慌てた。寝てる身を起こしてフェイレンに話かける。
「あのなぁ、お前がどう思ってるかは知らないけどオレは結構助かってるんだぜ?」
「ロ…イ」
「お前とフェイロンがいるからオレはなんつ〜か…、不安にならねえでこうやって過ごせてるんだ。それだけでずいぶん助けになってる。だからそんなこと言うな…。」
 あ〜、ガラに合わねえこといってんな。言ってからかなり恥ずかしくなってきやがった…。

 自分を責めるあたしをロイは励ましてくれた。やっぱり…ロイはすごく優しい…。普段はぶっきらぼうでも…昔からそうだった。だから…あたしはロイの事が好きになった。でも、このことをロイに言ったら今の関係が壊れそうで…しかもロイは一時期別の女の子を追いかけてた。あの時は辛かった、けどロイを諦めるなんてできなかった。今はその子は好きな人、ファルーシュ王子様と一緒に旅に出てどうなってるかはあたしには分からないけど、ロイもふっきれたみたいだけど…だからといってロイがあたしのことを好きになってるかなんて分からない。あたしのこと、ただの妹分としか思ってないのかもしれない。
 でも…、もうずっと我慢してきたから…止めることができなかった。

「…ありがと…。ねぇロイ…」
「ん…、なんだよ。」
 ガラにもないことを言ったと思ってるのか、ロイの顔が赤くなってる。
「あたし、ロイの事…好きだよ…。ずっと前から…好きだった。」

思ったより緊張しないで言う事ができた…。あんなに思い悩んでたのに言う時はあっさりしてるな…。
「…な、何言ってんだ!冗談もほどほどに…」
「冗談なんかじゃないよ…」
 顔を背けているロイにあたしは近づく。あたしはロイの右手を取って自分の胸に当てる。胸の形がぐにゃっと変わるのが分かった。同年代より大きい胸は目立ってジロジロ見られる事もあって嫌だったけど、ロイに触られるなら別にかまわない。
「ほら…あたしドキドキしてるんだよ。ロイが近くにいるから…。ロイの事が好きだから…」
「いや!いいから離せって。シャレになんねぇ!」
「嫌!絶対離さない!ねぇロイ…あたしのことどう思ってるの?ずっと聞きたくて…だけど怖かったし、王子様のところで戦ってる時は…あたしのことなんかちっともかまってくれなくてあの子のこと追っかけまわしてたし…」
 ずっと嫉妬してた…。どうしようもなく寂しくなって、話をするようになった同じく幼馴染の好きな人がいるノーマさんに相談したり、だれも見てないとこで自分で…その…しちゃったりした事もあった…。
「フェイレン…」
「…だけど…だけどもう抑えられないの!ロイが優しいから…いけないんだよ。どんどん好きな気持ちが大きくなって…抑えられないんだから…」
「オレは…」
 ロイは相変わらず顔を背けてる…。やっぱり、駄目なのかな…。
「ねぇ…ロイ。恋人になるのが嫌なら一回だけでいい。あたしと…セックスして。」

 訳がわかんねぇ、どうしてこんな事になってんだ…。フェイレンに好きだって言われて、今度は付き合わないなら一回だけセックスしてくれって…。とりあえず落ち着かせないと。
「おい、落ち着けよフェイレン…」
「嫌…なんだよね…あたしと恋人同士になる事も…セックスする事も…」
 こっちの話をまるで聞いてないようにフェイレンは自分の中でどんどん話を進めていってる。はぁ…こっちも腹くくるしかねえか。
「いいぜ…」
「え…。」
「だからオレはつきあってもかまわねぇって言ってんだよ。お前の事…その…好きだし」
「え?え?」
 オレもフェイレンのことが好きだ…。いや…最近になってあいつがどれだけオレを支えてくれたか、そのありがたみってのに気付いて、誰にもあいつの事渡したくないって思うようになった。けどオレはちょっと前までは他のやつが好きだったことはあいつも知っているだろうし、言っても尻軽だって言われて嫌われるか冗談と笑われるのが落ちだと思ってたのに…。昔から好きだったなんて…。
「だけどさ…。オレ、お前の事ずいぶん傷つけてるよな…。ずっと前から…その…だったなら。オレ、お前の気持ちも知らずにリオンばっかに気をかけてたし…。いいのか、オレなんかで?」
 オレの言葉を信じられないような顔で、オレを見ていた…。
「ロイ…ほ…んとう…なんだよね…。あたしの…事…」
「ああ、本当さ。なんなら血判を押して宣誓しても…うぁ!…んっ」
 急にフェイレンが抱きついて…キスをしてきた…。心の準備なんてできてない。オレの心臓は興奮で破裂しそうなくらいドキドキしてる。
「ん…ぷは!」
 お互いの唇が離れた。名残惜しそうに唾液でできた糸ができて…すぐに切れた。
「…ロイ…嬉しいよ…。あたし…。なんていったら」
 左肩に痛みがまた走る。…そ〜いやオレ、怪我してんだった…。
「っ…。いってぇ〜」
「あ!ごめんロイ!あたし…考え無しで…」
「いいから気にすんなって…。それより…その…離れてくんねぇか…」
 急に言われてフェイレンは悲しそうな顔をするが…。ヤバイですマジで…。さっきは手をあいつのでかい胸に押し付けさせられて、それだけでかなり興奮したのに今度は全身を合わせられて…。はい、もう完璧に起っちゃってます。なるべく今は気付かれずにすませたかったが…。
「あ…ロイ…なんか固いのが…」
 ヤバ…気付かれた…。
「いや…その…」
「……ねぇ…このまましちゃおう」
「おいおい…ここは病室だぞ!だれか緊急で入ってきたらどうするんだよ!」
「でも…ロイのこれ…苦しそうだよ。」
 そう言ってオレの息子をあいつは服とかけられた布団越しに撫でてくる。おまけに潤んだ瞳でこっちを見てくる…。こんな状況で断れる男がいるだろうか…いや、いない。

「じゃあ…してあげるね…」
「いや、オレが先に…」
「ロイは怪我してるんだから…無理しないで…。こういうこと初めてだから…うまくできないかもしれないけど…」
 そう言ってあたしはロイにかかってる布団を剥ぎ、ロイのズボンと下着をおろす…。大きい…。こんなのがあたしのに…。自分で指入れてみても狭かったのに入るのかな…。
「それじゃ…うまくできないかもしれないけど…」
 あたしは、ロイの…それに触った。すごく熱くて固くなってる…。
「っ…」
「ロイ!?痛かった?」
「…いや…気にすんな、痛くはねぇ…」
 痛くはないんだよね…。良かった…。え〜と、確かこうやって擦ると…。
「…っ、フェイレン…」
「気持ちいい?ロイ…」
「…ああ…」
 あたしに言われてロイは真っ赤になって答えてくれた…。いつもは頼りになる顔を見せてくれるロイが、そんな風になってるのはとってもかわいく見えた。それにあたしも…なんだか興奮してきた。
「嬉しいよ…ロイ…。」
 あたしがロイを気持ちよくしてあげている…。それだけで嬉しい。もっと頑張らないと…次は…。

 ヤバイ…。他人の手で…しかもガキの頃から一緒だったフェイレンの手で触られてる…。
 それを考えるだけでもかなり興奮してる…。でも男の意地というか…すぐにイってしまうのは情けないと思って耐えてるのに…。
「それじゃあロイ…。舐めるから…」
「…ちょっ!まて!今日風呂に入ってないし汚ね…うあっ」
 オレの制止も聞かずにフェイレンはオレのを舐めてきた。最初はぎこちなく下から上に舐めているだけだったが。
「ん…ロイ…この筋みたいなとこ舐めるとビクって動くね…。ここが気持ちいい?」
「ん…いや…その」
「あたし、ロイの気持ちよくなるとこ知りたいの…だめ…?」
「あ…ああ…気持ちいいぜ…」
 やべぇ…。本人は必死でオレに聞いてきてんのは分かるんだが…オレにとっては軽い羞恥プレイだ。
「舐めるだけじゃなくて手も動かしてして擦ってもらうと…。」
「ん…ちゅっ…分かった…」
「その…上の部分咥えるとき歯を立てないようにしてくれ…」
「ん…ふぅ…こふ?」
 だんだんと、射精感が込み上げてくる…。だめだ!もう耐えられねぇ!
「フェイレン!離れろ…もう…射精る!」
「え…?…いいよ、そのまま出して!」
「ばかやろ…かかっちまう…って!うあ!」
 フェイレンはオレの息子の先っぽを咥えてきた。そんまま飲むつもりなのか!?
「だひて!ろひ!ほのみゃみゃあたひに…」
「やめろ!フェイレ…っ!」
「!!」

結局そんまま出しちまった…。フェイレンは最初は驚いて目を見開いたけど、そんままオレが出し切るまで目をかたく閉じて耐えている。…不覚にもその顔がそそるなんて思っちまった…。
「ん…ん…ぷ…ふぅ…」
「おい!すぐ吐いちまえ!」
 すべて出し切った後、オレはすぐにフェイレンを離しオレの精液を吐くように言った…。だけど、フェイレンは頑なに口を閉じて吐こうとしない。それどころか…。
「う…んぐ…んっ」
 必死にオレの精液を飲もうとしてる。閉じた目からは涙が少し流れで出る。
「お前…無理すんな!飲むもんじゃねえよ!」
「……んっ…けほっ…」
 飲みやがった…。あんなもん見た目から飲めるもんじゃねえのに。べとべとしてるし、変な匂いするし。
「どうして飲んだんだよ。不味いだろこんなの…」
「ロイの出してくれた精液だよ…。不味くなんてない…。変な味だったけど…。それに…」
「飲んでくれると嬉しいんだよね。男の人って…。」
 そう言ってオレに笑いかけてくる。健気なヤツだと思った…。オレは…。
「フェイレン…」
「ロイ?……んっ!」
 オレはフェイレンにキスをした。さっき勢いでしてしまったキスとは違う…舌を絡めるディープなキスってヤツだ。さっきフェイレンの口の中に俺の精液が少し残っているかもしれないけど…そんなのは関係ない。こいつに何かしてやりたかった。健気なこいつにキスをしてやりたくなった。それだけしか考えられなかった。
「ん…ふっ…んんっ…ちゅる…」
 フェイレンもオレに合わせてきてくれた。お互いの舌を絡め、唾液を吸いあう…。ぴちゃぴちゃと音が鳴って興奮する。
「……ぷはぁ……。ロイ…」
「ありがとな…フェイレン…。次はオレが…」
「ロイ…でも…」
「オレの気がこんままじゃ済まないんだ…。いいよな…」

 ロイの手であたしのシャツがたくし上げられる。その下に巻いているさらしを取られて、初めてあたしの胸はロイの前に晒された。胸が大きくなるのはロイが喜んでくれるかもしれないし、王子様の軍で戦ってた時、ライバル視してたリオンが言っちゃ悪いけどぺったんこだから、胸が大きいのはひそかな自慢だった。だけど動く時にゆれると邪魔だから、いつもはさらしを巻いている。
「わりいな…。片手しか使えないし、オレも初めてだからうまくできねぇかもしれないけど…。」
 そう言ってロイはあたしの頬に手を当ててまたキスをしてきた。…ああ、もうほんとにこれが現実なのか分かんなくなってきた。ロイからキスしてくれたり…ロイがあたしの服を脱がしてくれたり…。
「んじゃ…触るぜ。痛かったりしたら言えよ。」
 そう言って、あたしの胸にロイは触り始めた。見てるとあたしの胸はぐにゃぐにゃロイの手に合わせて形を変える。気持ちいい…。ロイの掌が乳首をかすめたり、直接指でいじられるとそれはさらに大きく感じる。
「あっ…ん…ロイ…い…いよ…」
「フェイレン…」
 さらにロイは色んなとこにキスをしてきた。おでこ…首筋…鎖骨の辺り…胸…。されるたびにあたしは体を震わせた。
「うん…んっ…ロ…イ…」
「…フェイレン…下も…脱がしていいか…」

 片手で脱がすのは辛そうなのであたしも少し手伝った。今、あたしはたくし上げられたシャツとパンツだけになってる…。
「少し…染みができてるな…」
「…っ…ロイが…いっぱい触るから…」
 ホントは、ロイのを舐めたりしている時からあそこが濡れてきてるのを感じてた。その上からロイはあたしのあそこを触ってくる。
「んっ!ああ!」
「フェイレン!?」
「だい…じょうぶ…きもちいいから…。だけど…汚れるとやだから…脱がしてもらった方がいいかな…」
「ああ…分かった…」

「んっ!…あう!…ろ…いっ!」
 ロイの指があたしのあそこを動き回る。まだ直接は入れられてないが撫でられるたびに快感があたしの体をはしりまわった。
「すげぇな…。オレも興奮してきた…」
「い…や…っ!はずか…しいよ…!音…そんなに…たて…!ひゃん!」
 あたしは恥ずかしいのに…ロイはいたずらっぽく笑ってわざと音を立ててくる。グチョグチョとあたしのからでた愛液が音を立ててる。
「さっきの仕返しさ…。それにあんなにオレの咥えたり舐めたりしといて…今さらだろ?」
「…で…もぉ…」
 抗議するあたしの声を無視してロイは愛撫を続ける。
「ひゃっ!あぅ!んん!…ろ・・・いぃ…」
「…なあ…指…入れるぞ。」
「ん…うん…」
 そう言ってロイはあたしのあそこの穴に指を当てる。初めて自分以外の人の指が私の中に入ってきた。
「…くっ…ん…」
「大丈夫か…」
「うん…そのまま動かして…」
 あまり痛みはなかった。ロイがぜんぜんかまってくれなかった時、自分でしちゃう事が結構あったからなのかそんなに異物感はなかった。だけど…本番はもっと大きなロイの…が入ってくる…。
「ん…いいよ…。そうやって…前後に動かして…たまに…指で中を…かき回すように」
「ああ…分かった」
 ロイが中で指を動かすたびにまた音がなる。…少しずつ…あたしの中で何か…膨らんでくる物があった。
「あぅ…ああ!」
「…フェイレン…」
 ロイがあたしの中から指を抜いた…。指から愛液が伝って垂れている…。いよいよ…だね。
「ロイ…いいよ…

 フェイレンがオレの体に気を使ってくれたのか、オレは今医務用のベットに隣接してる壁に背をもたれて上半身だけ起こし、フェイレンがオレの体にまたがってる。さっきより体は痛くなくなってきてるし今更なんだけど、フェイレンに何回も言われておれもしょうがないからしたがった。
「大丈夫か…」
「う…ん…。やっぱり…大きいね…」
「自分のペースでいいからな…。無理だって思ったら…」
「分かってる…。…よし!」
 自分の頬を両手でピシャッと叩いてフェイレンはオレの物を自分のにあてがった。気合を入れたつもりなんろうがあんまりこの場に似つかわしくないのは黙っておこう。
「それじゃあ…入れるから…」
 ふつーなら男の台詞だよなあ…と心の中でオレはぼやいた。そして…まだ感じた事のない感覚がオレのを通して伝わってくる。とてもきつく締めてきて、熱い…。だけど…
「ん…うう……っ!!ああっ!」
「お…おい!フェイレン!」
 フェイレンの股に血が少し伝わってきた。顔も苦痛でゆがんでる。
「いや…いや!こん…なのに…まけな…い…ろいと…ひとつに…なるん…だから!ああっっ!!!」
「フェイレン!無茶すんな!抜いちまえ!」
「ずっと…ずっ…とす…きで…やっと…せっくす…でき…るのに…やめる…なんて…したく…ないよぉ…」
「フェイレン…」
 涙で顔をぐちゃぐちゃにしながらそれでもオレのを入れようとするフェイレンに心を痛めながらも、ここで止めるのはもっとフェイレンを傷つけると思ったオレは、少しでもフェイレンの気持ちが和らぐようにさっきみたいに胸を触ったりキスをしたりした。
「フェイレン…落ち着け…自分のペースで…な…」
「う…うん…ろ…い…やっぱ…り…やさしい…ね」
「…ばかやろう…オレは優しくなんかねぇよ…お前にだって何回も迷惑かけてるし…」
「…やさしいよ…ろいは……どんかん…だけど」
「うっ…それは…すまねぇ……」
 少し落ち着いてきたのか、オレが話しかけてるから意識が痛みに少し取られなくなってるのかさっきより表情が和らいだ。そして…
「全部入ったぞ…フェイレン」
「ほんと…よかっ…た……ろい…あたしの…なか…へんじゃない?」
「他のに入れた事ねぇからわかんねぇよ。…だけど…気持ちいいよ…」
 言ってて恥ずかしくなってきやがった…。だけど、こいつは痛みに耐えて最後まで頑張った…オレもしてやんないと。
「まだ動こうとするなよ…痛いだろ…」
「え…うん…」
「落ち着くまでオレに任せてくれ…」
「ろい…んっ…ふっ…」
 そう言ってオレはフェイレンの赤髪を撫で顔に手を添えてまたキスをした…。そして開いているほうの左手で…上まであがんないし、動かすと肩に痛みが走るけど…フェイレンのあそこに指を当ててさっきみたいに愛撫する。

「んんっ!はぅ!ぷは……ろ…い…」
「少しは気持ちよければ痛みを少なくできると思ったんだけど…。駄目だったか?」
「だいじょうぶ…駄目…じゃないよ…」
 そのまま暫くオレはフェイレンへの愛撫を続けた。少しづつまた愛液が出てきてオレの指を濡らしてきた。
「ん…ロイ…もう…だいじょうぶだから…動くよ…」
「フェイレン…無理は…」
「むりなんか…してないから…お願い…」
 そう言ってフェイレンは腰を上げてまた下ろす。そのたびにぐちゃっ、ぬちゅっとフェイレンの血と愛液の混じった液とオレのがいやらしい音を出す。
「ん…あっ…ふぅ…んっ…くぅ…」
「まだ痛いだろ…無理すんなって…」
「ん…だい…じょうぶ…いたくないし…すこし…気持ちいい…ロイは…気持ちいい…?」
「…いいに決まってんだろ…」
 よかった…と微笑むフェイレン。こいつ、いつもは気が強くて男勝りなのにこんなに健気だったなんて…。そう思うと、オレのフェイレンに対する気持ちがさらに強まった。
「くっ…フェイレン…オレ…お前の気持ちに気付かなくて…ずっとお前の事傷つけてきたけど…」
「んっ…ロイ…?」
「ほんと…虫のいいことだってのは分かってる…だけど…お前の事…その分…大事にするから…」
「ロイ…ロイっ…!」
 フェイレン動くスピードが早くなる。オレも自然と腰をフェイレンに合わせて動かし始めた。
「フェイレン…!フェイレン!」
「あっ!あうっ!ああっ!ロイ!ロイっ!」
 水音もだんだん激しさを増してきてる。それと同時にオレも…だんだんと限界が近づいてきた。
「フェイレン…オレ…もう!」
「ロイ!っあ…いいよ!んっ…あたしの…あたしの中に…ちょうだい!」
 最後にオレはまた腰を動かすスピード上げた。
「っ…出すぞ…フェイレン!」
 オレは力をこめてフェイレンを突き上げ、それと同時にイった…。

「ああ…ろい…だして…るんだね…あたしの…中に…」
 ロイがあたしの中に精液を出してくれた後、緊張の糸が切れたのかあたしの体がふらついた…。
「フェイレン!」
「……あ…ロイ…」
 ロイがあたしの体を抱きとめてくれた。
「っと…大丈夫か?」
「うん…ちょっと…気が抜けちゃって…へへ…ほんとにしちゃったんだね…あたし達…」
「ああ…」
 とりあえず、腰を上げてロイのを抜く…。抜けたら…中からあたし達の液が混じった物が流れ出てきた。抜いた後もすこし…まだロイのモノが残ってる感じがする。
「なんか…恥ずかしいね…」
「お前から誘ってきたんだろ?今更なにを言ってんだか…。」
「むっ…だけど…気持ちよかったでしょ?」
 あたしはいたずらっぽくロイに微笑む…。

「…ああ…ってやば!?」
「ロイ!どうしたの!」
 急に声を上げたロイにびっくりしてあたしは聞いた。
「ここ…病室だってのすっかり忘れてた…」
「あ…」
 あたしは周りを見る…。シーツに残った血とピンク色の液体の跡…精液と愛液の独特の匂い…。どうみても事後です。本当にありがとうございました。
「やべぇ…おっさんになんていわれるか…。それに声もかなり上げてたし…」
「ど…どうしよう…」

 結局ロイがその後あたしを帰して、医者のおじさんに謝りに行ったらしい。どうやら、あたし達が中でやっちゃってたのはばれてたらしく、さんざんからかわれた上に一週間昼飯をおごれと言われてその件はチャラになった。

「ったく、ひでぇ医者だぜ…」
「病室で…しかも安静にしろといったのに激しい運動をする馬鹿な患者には言われたくないな。」
「う…」
 あたし達は今、そのおじさんと一緒に昼ごはんを食べてる。
「だけど嬉しいよ!ロイが義弟になってくれるなんて。」
「あ…兄貴!」
 兄貴は前からあたし達が付き合う事を素直に喜んでくれた。だけど恥ずかしいし、兄貴がべらべらしゃべるおかげであたし達ができてる事が劇団に広まってしまった…。
「はぁ…もう…勝手にしてくれ…」

「ねぇ…ロイ…」
「謝るなよ。」
「え?」
 二人が気を利かせたのか先に食堂を出て行ったあと、あたしが謝ろうとするとロイはあたしがそうするのが分かってたかのようにそう言ってくれた。
「オレだってあの場でやめる事なんてできなかったし…お前が気にする事じゃねぇよ。」
「ロイ…」
 やっぱりロイのこと好きになってよかった…。ファレナでの戦いの時…ロイは王子様の影武者だったけど…あたしにとっては…影武者なんかじゃない…本当の王子様だ。今までも…これから先も…ずっと…。
「ねぇ、ロイ…。あたし、ロイのこと好きになってよかったよ。」
 そういわれて、顔を赤らめるあたしの王子様に、あたしは笑顔で笑いかけた。

(糸冬)

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