シーザー×アップル 著者:6_696様

ごとん、とドアの向こうで音がした。
「誰かいるの?」
アップルが問い掛けるが、返事はない。
怪訝な顔を作りつつ、自室のドアを開けると、彼女の愛弟子が転がっていた。
「シーザー! どうしたの?」
「ん……、アップルさん?」
頬をほんのり赤くして、幸せそうにシーザーが答える。アップルは顔をしかめた。
遠くから風に乗って、広間の騒ぎが聞こえてくる。
戦いが終わり、今夜はささやかな、いや盛大な宴会が催されているのだ。
「誰が飲ませたの! エース? それともナッシュ?」
「ん、違うよ〜。自分で飲んだ〜。アップルさんもいいって言ったじゃない」
確かに戦勝記念の宴会だから少しは羽目を外してもいいと言った。
アップルは早めに切り上げ部屋に戻ったのだが、まさかこんな時間までシーザーが残っているとは思わなかった。
しかも、立てない程に酔いつぶれて。
「まったく……。若い子は飲み方を知らないんだから。立てる?」
肩を貸してシーザーを立たせようとする。

「ほら! しゃんとして!」
「アップルさん……。喉渇いた……。水飲みたい」
ふう、とアップルはため息をついた。仕方なく千鳥足のシーザーを自室に入れ、長椅子に座らせる。
そして棚からグラスを取り出し、テーブル上の水差しに手をかけた。
「……アップルさん」
「ん? なあに?」
「戦い、終わっただろ。アップルさんはセイカの村に帰るの?」
「そのつもりよ。何度も言ったじゃない」
「そっか、帰っちゃうんだ……」
振り返るとシーザーは長椅子に横たわり、すやすや寝息を立てている。
「ちょっと、こんな所で寝ないで、シーザー!」
アップルが声を荒げるが、返事はない。その様子を見て、深くため息をつく。
「……仕方ないわね。今までがんばってきたんだしね」
アップルは戸棚から予備の毛布を出し、シーザーにそっと掛けた。
よほど疲れているのか、起きる気配はない。
無理もない。軍師の重みは並大抵ではない。それを華奢な体で耐え抜いて、見事軍を勝利に導いたのだ。

「お休み……」
顔を寄せ、毛布を肩まで引き上げようとしたその時。
シーザーの目が開いた。
「隙あり!」
「!」
驚く間もなく、手首を掴まれた。
「寝たと思った?」
にっこり笑うシーザー。かっと頭に血が上り、左手で殴ろうとしたら、そちらの手も掴まれる。
力を込めるが振りほどけない。そのままぐるりと体を入れ替えられ、あっけなく長椅子に組み伏せられた。
「うちの家系ってさ、代々酒に強いんだよ。知ってた?」
そういえば、マッシュは子供の前では飲まなかったものの、あれはザルだとビクトールが言っていたことがある。
シルバーバーグ家にいた頃、アルベルトは顔色を変えずにグラスを空にしていた。
「……わかったわ。とりあえず、どいてくれない?」
「やだね」
手首を掴む手に力がこもる。
「俺の気持ち、知ってんでしょ?」
「冗談はやめて、子供のくせに!」
「子供だよ。俺、大人になりたいんだ。大人にしてよ、アップルさん」
本気なのか冗談なのか。シーザーはくすくす笑っている。
「な……」
口を開いた瞬間、唇を塞がれた。

驚いて、なんとか逃れようと首を振るが、頭をがっちり押さえ込まれ離れられない。
いつのまにか解放された左手で、シーザーの肩を押し、後髪を引っ張ってみるがびくともしない。
アップルの体から力が抜ける。抵抗が弱々しくなり、シーザーは頬に冷たいものを感じた。
それが涙とわかって、シーザーはようやくアップルを解放した。
「……そんなに、嫌?」
アップルは泣いていた。シーザーの心が打ちのめされる。
少しは望みがあるんじゃないか、受け入れてくれるんじゃないかと淡い期待を持っていたのだが。
「ごめん、もうしない。だから……」
「違うわよ」
涙をぬぐいながら、アップルは答えた。
「あなた、なんにもわかってない。……嫌なはずないじゃない」
驚いてシーザーは目を丸くする。月の光に照らされ、アップルの衣服は乱れ、その姿はやけになまめかしい。
さっき暴れたときどこかに飛んだのか、眼鏡もかけていなかった。
「私は離婚してて、16才も年上なのよ。
しかも、あなたは私の教え子で、御両親から大切な息子さんをお預かりしてる身なの。
……好きになっちゃいけないって、ずっと思っていたのに、あなた全然わかってないじゃない」

思わぬ告白にシーザーは驚く。
「アップルさん、それ本当?」
アップルは頷いた。ずっと隠して押さえ込んでいた感情が一気に噴出し、もう止めることはできなかった。
「俺のこと、好きなの?」
青い目で覗き込んでくる。まっすぐに透明な、吸い込まれそうな青い瞳。
「……好きよ。ずっと前から。でも……きゃっ!」
ふわりとアップルの体が宙に浮く。
「じゃ、俺たち相思相愛だったってわけじゃん!」
シーザーはアップルを抱き上げ、そのままベッドに下ろす。驚いて、思わずアップルは身構える。
「セックスしよっ」
満面の笑みで、シーザーはすでに上着を脱ぎ始めている。
「あなた、それしか頭にないの?」
「うん」
気持ちいいくらいきっぱり、シーザーは言い放つ。アップルの肩ががっくりと落ちる。
そうこうしているうちに、シーザーはアップルの服の前の合わせ目に手をかけた。
「ちょ、ちょっと待ってシーザー。私、まだいいとは言ってな……」
「いーじゃん。俺もう止まんないよ」
このせっかちさ、誰かに似ている。
「少しは人の話を……んっ……!」
開いた胸元にシーザーが顔をうずめると、びくっとアップルの体が跳ねる。
「いい匂いがする……」
シーザーは猫のように、首筋や鎖骨にそって舌を滑らせる。

「んっ……!」
思わず出そうになった声を、アップルは飲み込んだ。
乱れるのが怖かった。シーザーに対して、まだ年上の威厳を保っていたかった。
シーザーの手が服の下に滑り込み、胸のふくらみを捕らえる。
軽く撫でるように全体をさすると、頂きがつんと固くなっていくのがよくわかる。
その部分を手の平で転がすように撫でまわす。
「はぁ……ああ……」
呼吸と共に、掠れた甘い声がかすかに聞こえてくる。
快感の波に溺れてしまいそうな理性を必死に奮い立たせ、我に帰ると
シーザーは前を一気に押し広げて、服を剥ぎ取ろうとしていた。
「ま、待って、シーザー」
息を荒げ頬を上気させたまま、アップルが上半身を起こす。
「……自分で脱ぐわ」
ファスナーやらボタンやらを手早く外し、白い裸体が露になる。
「その気になってくれた?」
「服を破かれたら、困るからよ」
「俺、初めてだから、優しくしてね」
「馬鹿」
再び唇を重ねて吸い上げ、転がるようにベッドに倒れこむ。
くちゅ、くちゅ……。音が聞こえる程、シーザーの舌がアップルの口中を愛撫する。
甘い唾液を心ゆくまで堪能して、手ですくいあげるように胸を揉む。

おずおずとアップルの腕がシーザーの背中に回される。受け入れてくれてる……シーザーは嬉しかった。
唾液が糸を引いて唇が離れ、耳朶を舐め上げて甘噛みする。
「あんっ……」
体が小刻みに震え、思わず声があがる。
シーザーはそのまま嬉しそうに首筋を唇でなぞりながら、乳首を揉んで摘み上げる。
初めてのくせにやり方をよく知っている……。
本能なのか、自室のベッドの下に隠してあるつもりの、その手の本から得た知識なのか。
シーザーの舌が乳首を捕らえ、アップルの体が小さく跳ねる。
空いた手でもう片方の膨らみをもてあそびながら、シーザーは丹念に舐め上げ、吸って、軽く歯を立てる。
「っ! うっく……ん、ああ……んふぁ、んっ……」
押さえていた声が口から漏れる。
久しく与えられていなかった快楽が、アップルを支配し、思考を奪っていく。
「アップルさん、気持ちいい?」
「……っ、んん!」
返事の代わりに、シーザーの頭を抱きかかえて、自分から口付ける。
舌がからまる。熱い、激しい口付けにシーザーの方が戸惑う。
それでも、アップルが自分の手で乱れているのを見るのは嬉しかった。
熱い掌で肌に触れるたび、アップルは甘く、短い喘ぎをもらす。
「っあ……、はぁ、ふぅっ……ん」
「アップルさんのそんな声、はじめて聞いた……」
「へ、変なこと言わ……あっ、ひぁ、はぁぁぁん……」
シーザーの掌が背を撫で下ろして腰をなぞり、そろそろと下に降りて来る。

「ま、まって……ひんっぁ、はぁ……う!」
内腿をなで上げ、柔らかい茂みをかき分けて秘所に到達すると、そこはもうしっとりと湿っていた。
スリットに添って指を走らせ、花弁をいじって弄ぶ。とろり、としたものがシーザーの指に絡みついた。
「濡れるって、こんな風になるんだ……」
「……馬鹿、んっ!」
中指で探るように弄ると、アップルの体が跳ねるように動く。
やがて、上の方についている突起を探り当てる。もしかして、これが……?
「アップルさん、これ……」
「……いちいち、聞かなくて、いい……。ひあぁぁっ!」
突起を軽くつまむと、白い喉を反らせ、アップルは悲鳴のような嬌声を上げた。
「い……、あ…あああ……ふぁ、んんっ!」
やがてシーザーの指は、秘所に吸い込まれるように沈んでいく。
「は……あぁん」
くちゅ、くちゅ……。粘っこい音をたてながら浅く、深く、ゆっくりと、時には激しくシーザーの指が動く。
柔らかな肉壁を確かめるようにかき回すたびに、叫びのような喘ぎが部屋を満たす。
「シーザー……ぅく……ん、あ、あ、あ……ん……」
快感がさざ波のようにアップルの背を駆け上り、声が大きくなる。
その声に、シーザーもますます興奮する。
「アップルさん……俺、もう……」
吐息のようなかすれ声でシーザーが訴える。
「シーザー……」
痛々しいほど怒張したシーザーのものをそっと手で包む。

自分から足を開き、手を添えてそっと秘所へ導いた。熱を持ったシーザーのそれが、花弁の中心へあてがわれる。
「……いらっしゃい、シーザー」
「アップルさん……」
アップルの足を持ちあげて、ゆっくりと、シーザーは分身をアップルの中に沈めた。
濡れそぼったそこは、抵抗なくシーザーを飲み込んでいく。
「あ……ぁん……シーザー……」
離婚してから男を受け入れたことがないせいかのか、アップルの中はきつく、そして暖かかった。
己の分身を包む肉壁は、溶けてしまいそうなくらい心地よい。
締め付けられる快感が波のように押し寄せ、シーザーを虜にする。
「……動いても、いい?」
潤んだ瞳で、アップルは頷く。ゆっくりとシーザーは腰を動かしはじめる。
ぎりぎりまで引き抜いて、再び挿入。それを繰り返す。
中の肉壁を擦るように、リズムカルに突き上げる。
突き上げる度にアップルの髪が踊るように乱れ、乳房が別の生き物のように揺れる。
「あ…は、っん! あ、ああ……」
熱い喘ぎが耳をくすぐる。
その声に追い立てられるように、シーザーの動きが速くなってきた。腰を打ち付ける音が響く。
「あ……ああ……、シーザー……すご……っん!」
シーザーの背にアップルはしがみついた。爪が立ち、肌に赤い線を描く。
白い足がシーザーの腰に絡められる。シーザーに合わせてアップルも腰を動かす。
アップルが与える快楽に、シーザーは我慢できなくなってきた。

「アップルさん……俺、もう……」
お互い限界が近づいていていた。
「っぅあ! あああ、……は、はやくシーザ……はぅぅ!」
「っ! う、ううっ、アップルさ……んっ!」
いっそう動きが強まり、シーザーは熱いものをアップルの中に放った。
「……あ、あああああーっ! シ……ザーっ! あああー!」
「アップルさんっ!」
お互いの名を叫びながら、同時に果てた。

情事の後、シーザーはアップルの胸に頭を預け、ぼんやりと快楽の余韻に浸っていた。
「あのさ、アップルさん。……大丈夫かな?」
「何が?」
頭の上から、アップルの声が聞こえる。
「女の人は、危険日とか安全日とかあるでしょ? その……」
「そんなこと気にしてたの?」
アップルは笑った。
「大丈夫よ、多分」」
「よかった。少し心配だったんだ」
無邪気な顔で、シーザーは喜ぶ。
ただ、できたらできたで、それも悪くないかなとアップルは思った。
マッシュのぬくもりが残るあの村で教師をしながら、のんびりとシーザーに似た赤毛の子供を育てる――。
そんな想像をして、アップルはふふっと笑った。

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