ライバル攻撃(スバル×ラン) 著者:9_49様

「どうやったらそんなにキレイになるか教えてくれ!」

スバルが真剣そのものの表情で問い詰めてきたのは昼過ぎの事だった。
紋章屋のカウンターを挟み、呆気にとられるように、数舜だけジーンが瞳をぱちくりさせる。

「…急に、どうしたの?」
「オレだって……オレだって女なんだぞ!なのに皆『男らしい』とか『逞しい』とかとか『がさつ』とか『ぶっきらぼう』とか『ナイチチ』とか『ツルペタ』とか『仲間になるときのツンデレハァハァ』とか言いやがって……」

腹の底から悔しさの限りを絞り、握り締めた拳を震わせてスバルはカウンターに突っ伏し嘆く。
男に負けぬ働きで漁を行うスバルである。その生活や習慣、仕草、言動について、確かに女性寄りとは言い辛かった。
しかし、彼女とて女の子なのだ。長年付き合ってきた周囲の人々から『男っぽい』と言われるのとは違い、城にてまだまだ親交の深くない人々から軽い感じであれ『男っぽい』と言い続けられるには、少々スバルは精神的な成熟がなかった。

「だから!見返してやりたいんだよ!オレだって…その…女らしい魅力があるって事を!!」

そこで、彼女が閃いたのが女性らしい女性に女性というものを指南してもらおう、というものだった。
ここで女性らしい女性というのがジーンに突き当たるのはエロパロ板において理の当然であるのだ。

「あらあら、スバルも女の子なのね…でもね、女は中身なのよ?」
「あんたが言うなぁああああああああああああぁぁぁあああぁぁああああぁぁ!!!!!!!」

もうマジげっそりするぐらい本気で泣きながらスバルは叫ぶ。
ジーンさえもビックリするそのシャウトからスバルは懇願を続けた。

「頼むよジーンさん!こんな事5までの数字を冠してる幻水を痴女丸出しで堂々と皆勤賞してるジーンさんにしか頼めねぇんだ!」
「う〜ん……」

微笑ましさを交え、困ったような仕草で人差し指を頬にあてるジーンは、しばし小首をかしげた後、スバルに傾けた瞳を色っぽく細めて笑った。

「そうね。今はお店があるから、夜になったらまたいらっしゃい…」
「ほ、ほんとに?!」
「えぇ、ゆっくり色んな事を指南してあげるわ……スバルには豊富に女性としての資質があるのよ。ただ、鍛えていないだけ……」

ジーンの言葉に、照れを見せながらも無邪気な喜びを表情に出すスバルだが、そんなスバルを眺めるジーンの微笑みは、
まるで蛇とか狐とかなんかそんな感じで妖しくて今にも「美味しそうなスバル」とか言い出しそうだったと、紋章屋の手伝いしてる19歳の男性(童貞)は語る。

いまだ灯りがちらほらと見える城を背に、ランは大きくあくびをする。
満月が雲に見え隠れする静かな夜だった。

釣り場の端っこで釣り糸を垂らしてもうう半刻だろうか。ぷっつりと当りが無くなり、幾分かの退屈が胸に広がっていく。
小船で移動ができれば、すぐにでも大漁の自信はあったが、夜間の小船は使用禁止だった。河に生きるラフトフリートの娘だが、おいそれ夜に漕ぎ出すのには懸念が多い。
いや、ラフトフリートの娘だからこそ、そんな軽はずみな船の扱いをしないのだろう。

とはいえ、そもそも小船を管理するスバルがいないのだから、禁止を破って小船を使う選択肢もないのだが。

「そういや、ここ最近夜に見ねぇなぁ……」

釣り糸を軽く上下させ、ぽつりと漏らす。
そう、ここ最近、夜間にスバルを目撃する率が実に低いのをランは感じているのだった。

幼い頃からなじみの深いランにとって、スバルと行動が重なる事はしばしばあり、ラフトフリートからこの遺跡の城へ移り住んでからも風呂やらご飯やらで約束もなしに顔を合わせる事は多かった。
それが、何日も前からかぷっつりと無くなったのである。
環境が変わって何かしらの生活の変化があったのだろうと、別段気にかけるものでもないが、やはり姉妹同然で育ったランには幾ばくかの寂しさが心の隅に鎮座する。

「………ちぇ、釣れねぇや……」

ちゃぽん、と釣り糸を引くと水面に波紋が立っては写った満月を揺らす。
ふと、その満月が暗くなる。

雲だ。

丁度、仕舞いにしようとしていたランは釣竿を縦にして糸を巻き、手早く持ち物をまとめて立ち上がる。
踵を返す折になると、雲に隠れた満月もまた顔をのぞかせて、ほのかに見える範囲が広くなってくれた。
釣れた魚を全て湖へ返したゆえ収穫はないが、やはり最後の方に辺りが無いのは残念に感じ、一つため息をつく。
ゆったりと、一歩踏んだトコロだった。

誰かいる。
感覚的に人のいるような雰囲気を察したランは、きょろりと頭を周りに向けてから、階段の方へと視線を巡らす。

「……なんだ、スバルか。よう」

いたのは、幼馴染だった。
だったのだが、

「……スバル?」

何か、違った。
いつもの元気に溢れた活発な空気は微塵もない。
見違えるほど表情と立ち振る舞いが穏やかなのだ。

やや顔を伏せたまま、スバルが降りてくる。
やはり、溌剌とした足取りではなく霧雨のように驚くほど静かだ。

「おい、返事ぐらいしろよ。勝手に道具使わせてもらったぜ。お前もこれから釣るのか?」

ぎしりと階段を降りきって、木の板をスバルが踏む。
ここまで近づいて、ようやっと気づいたのだが、いつも付き合っている時と、匂いまでが違っていた。いつもはファレナの恵みを体いっぱいに受け止めて、
太陽と河の匂いを纏わせるスバルが、今では実に濃く粘度を感じさせる豊潤な香りに包まれている。

もう、手を伸ばして触れ合えるような距離、月明かりの慎ましい光の下で二人は向き合った。
訝しげなランは、ややうつむき加減なスバルへともう一度口を開く。

「スバル!おい、何か言えよ。気分でも悪いのか?元気がな……」

くらりと倒れたようだった。
ぎょっとする間もそこそこに、スバルはランの胸に崩れるように飛び込んだ。
むっと、濃厚なスバルの匂いがさらに増す。

「えっ?!お、おい、大丈夫か?」

反射的に抱きしめたランだが、妙にスバルの体が熱い。
素肌を晒す部分の多いラフトフリートの衣服を着る同士、流石に常温かどうかは肌を通して感じ取れる。
困惑したようにランがスバルの肩をゆさぶるが、スバルはランの背に腕を回してから動かない。
心なしか、ランは首筋辺りで感じるスバルの呼吸も荒い気がしてきた。

「な、なぁ、歩けるか?おい、返事しろよ!苦しいのか?」
「ラン……」

名を呼ばれ、ランは内心ほっとする。
ゆぅるりと、ランに抱きつくスバルは顔を上げ、口を親友の耳元まで持っていくと悦びの響きを震わせた。

「ランの胸って気持ちいいよなぁ…」
「なっ!?」

熱ぅく湿気た囁きに、顔を真っ赤にしてランはスバルを振り払う。
乱暴に引き剥がしたランだが、まるで力の入っていなかったスバルは為されるままに押された。そして、その勢いは殺さずにランの手を掴み、引っ張り込む。
そうすると二人してもつれて倒れこむのだが、絶妙な体捌きでスバルはランとの位置を入れ替えた。結果、ランがスバルに押し倒される形になるのだが、恥ずかしさに赤いままのランは上にのしかかるスバルへまくし立てる。

「て、てめぇ、人が心配してやったのに何恥ずかしい事言ってんだよ!!早くどけよ!!」

言うとおり、素直にスバルはさっさと体をどけた。
それに続くように、ランも板に手をついて体を持ち上げようとして、

「えっ……?」

腕を掴まれ、まとめられ、縛られた。
両手首を背中で極められ、巻き取られ、またランは板の上に転がってしまう。

「つかまえたぁ……」

妖しい響きだった。
まるで同年齢とは思えないほどスバルの声は耳に甘ったるくまとわりつく。
ぞくりと、何か不気味な予感を察し、まだ赤みの残る顔でランは怒りを表す。

「お、お前なぁ!なんの冗談だよ、これ!早くはずむぅぐぷ!!?」

抗議するランの大口へと、スバルが覆いかぶさった。
唐突すぎて、一寸、ランは何をされたかわからない。
しかし、人体において最高級に敏感な舌は正確にその感触をランの脳髄へと叩きつける。
ざらつきを含み、生温く粘ついた液体を絡ませる肉の感触―――スバルの舌。

「っぱぇっひぃ!?」
「あ」

強引顔をそむけ、ランはスバルから逃げた。
困惑とある種の恐怖にランは震える。

「な、な、な……何、何、だ…何すんだよ……」

必死で手を動かすが、まるで自由は利かず、混乱した頭で状況を整理しようとするが、まるでまとまらない。
すがるようにランはゆっくりとスバルを見るが、スバルは緩んだ表情でランを見つめていた。

「何って…キス……キス。だってランがあんまり可愛いもんだから…」
「!!?」
「な、ラン。オレさ、ジーンさんにいろいろと女らしい事教えてもらって……気持ちいい事ばっかりなんだ……」

仰向けのランの鼻先に、鼻先があたるくらいの距離でスバルは夢現の焦点と声音で語る。
お互いにお互いの体温がどんどん上昇していくのを感じながら、ランは青ざめ、スバルは赤らんで見詰め合う。

「だからさぁ……ランにも教えてやりたくて……」
「や、待っ!」

また、スバルがゆっくりと唇を下ろし始めるのを見てランは頭を振って抵抗した。
羞恥と常識が必死でスバルを拒絶するのだ。
ぴたりとスバルの動作が止まった。
相も変わらず吐息が肌をくすぐる距離だが、スバルがランの瞳を覗き込んで来る。
そして、絶望にも似た色を瞳に刻み、泣き出しそうな声。

「ランはオレじゃ嫌なのか?いつも一緒だったオレじゃ駄目なのか?」
「だ、だって女同士だぞ!?お、おか、おかしいだろ……」
「……わかった」

そんな返事だったが、ランはまるで安心できなかった。
スバルの雰囲気がまた変わったからだ。
甘えてくるような気配だったのが、今では強行に出るような硬度のある雰囲気なのである。
ランが慌ててスバルを説得しようとしたが、もう遅い。

「わかった……無理やりする……」
「待っ」

また、スバルが唇を突きつけてくる。
咄嗟に歯を食いしばったランだが、無駄な事。スバルは、自分の歯とランの歯がぶつかると、すぐにランの下唇をくわえた。心地よく弾むような感触。
あむあむとランの下唇を、スバルは己が上下の唇で赤子が物をねぶるようにもてあそぶ。たっぷりとまぶされたスバルの唾液により、すぐさまランの下唇は湿気を帯び、スバルの食む様な行為の滑りがよくなっていく。

にゅるにゅるぷにぷに

仔犬が仔犬にじゃれて甘噛みするように、親鳥が雛に餌を与えるように。
スバルはちゅぱちゅぱとランの下唇のみを集中的に吸い付いて舐め転がし、自分の唇とこすり合わせていく。

怖気と寒気がランの背筋をひた走るが、ここで悲鳴を上げようものならば、すぐさまスバルが口内へとその舌を挿入してくるのが目に見えている。必死で、涙をこらえてその不気味な感触に耐えて歯を食いしばる。

「ん……ふぅ……ふゃぁ……ひゃ……ぇ」
「ふふ…ランかわいい…」

スバルの呟きとともに離れた唇は、ちゅぽっと音を立てた。
もちろん、ランもそれでスバルが終わってくれるとは思えなかったし、スバルも終わらせる気などさらさらない。
今度はランの上唇に軽ぅく歯を立ててくにくにと感触を楽しみ始めた。いやいやをするようにランは頭を振ろうとするが、しっかりとスバルに首を抱きしめられてそれもかなわない。
ちゅうちゅうと、まるで飲み込もうとするぐらいに強くランの上唇に吸い付きながら、スバルは口の中に入ってきたランのそれをねっとりと味わう。
ランの上唇の端から端まで丹念にねぶり、シワの一本一本まで丁寧に丁寧に舌の先でいじくり回すのだ。

(やだ…やだぁ……やめろスバル……やめてスバル……)

泣きそうになった。
何故ここまで気持ちの悪い事を友にされなければならないのだろうか。
そんな理不尽への悲しみでランは一杯になる。
しかし声で抗議など出来ない。
しようものならばまた口内を犯される。
スバルの舌に噛み付くのも駄目だ。
エロくなくなる。
ぎゅっと目を瞑り、スバルの気が済むのを待つ。
今は、スバルが正気になるのを待つのだ。

(……あれ…でも…)
「気持ちいい?なぁ、気持ちいいか?」

ギクリとなった。
まるで儚いものではあったが、ランは確かに、徹底的に侵略される唇に快感の波を得たのだ。
そこへ、まるで心を呼んだかのようにスバルはランへと尋ねてきた。

「それとも気持ち悪いか?」

ランは必死で首を縦に振る。
今あった気持ちを消し去りたい一心を込めて。
スバルは、そんなランを見て一層深く悲しそうに目を伏せる。

「そっか……ごめんラン。オレ一生懸命やったんだけど……わかった」

また、ギクリとランは怯える。
スバルの今の「わかった」はきっと、「わかった、やめる」に繋がらない。
きっと……

「わかった、もっと頑張る」

恐怖さえ滲ませた不安に、ランは震えた。
もうスバルにどんな反応をしても無駄だ。
彼女の目的が達成されない限り、自分はきっと解放されない。
めちゃくちゃに動き、背後に回されて縛られた手を解こうとするが、やはり無意味だった。
くらくらするほど頭を振り回そうとしたがスバルの抱きしめる手は緩まらず、やはり無意味だった。

また、スバルのクチビルがランに辿り着く。

明らかに先ほどよりも吸引力を強め、動きを早めてきた。
ランの小さな下唇を、口いっぱいに頬張っているかのようにスバルは舌で刺激する。くにゅくにゅと、的確に感度のよい部分を舌で押しては擦り、甘噛みして転がし、自分の上下の唇でランの下唇をしごきたてていく。
唇を潤滑にこすりつけられる働きをする唾液を、ランが喉に通すのだけは全力で阻止するため、二人の口許はぬらぬらと唾液に塗れて淫靡であった。

やがて、ランの吐息も幾分かの熱っぽさを帯びていく。
上と下の唇を、交互になめしゃぶられるにつれて、最初はほんの小波だった快感も、徐々に大きくなっていくのだ。
それを感じ取ってか、否か。
スバルはランの上唇に吸い付いたまま、ランの歯肉へと舌先を擦り付けてくる。おぞましいほど強烈に本能を燃やされる感覚。嫌悪か快感かも判別つかぬ未知の感覚に、ランは体が熱くなるのを理解した。

唇と比べれば、歯を内包した分、やや硬さのある歯肉だ。スバルはここぞとばかりに顎を強引に押し出して、さらにランの唇の周りを侵略する。まず、ランの前歯をまるで飴のようになめ始めた。
それが甘く感じるかのように、徹底的に舌全体を擦り付けて、擦り付けて、擦り付ける。
次いで、歯と歯肉の境を繊細な舌使いでなぞり、いじくっていく。

「んふぅ……」

ランも、これにはたまらずに呻き声のように、喘いでしまった。
そして、その極上の音色はスバルをより加速させる。

歯の根をねぶりまわし終えれば、より注意を払った舌先の動きで、しかし強引に歯肉自体を圧迫していく。
舌で外側にある歯肉の隅々を犯され、ランは薄くぼんやりしはじめた頭でマッサージのようだと思った。本当に、自分を気遣ってくれるかのように絶妙な力加減でスバルは舌で歯肉をしごいてくるのだ。
そこまで来て、ふと気づく。

「マッサージのように思う」という事は、つまり「マッサージのように気持ちがいい」のだと。
霞のかかったように思考鈍ってきたランは、それをそのままに受け入れる。

あぁ…あたし気持ちいいんだ………

「っぷはぁ…」

まるで上等の料理による満腹に似た表情で、スバルはようやっとランから顔を離す。
手こそ離さないが、随分と脱力しているのは、しびれるような快感を得ているからだろう。

「…ごめんなぁ、ラン……つばでべたべただ………」

そして、心底申し訳ない声色と表情で、ランの口許に付着したランと己の唾液をなめ始めた。
リオンやシュンミン等には劣るが、それでも十分弾力豊かにふっくらとした頬に口付けし、子猫が甘えるように舌で唾液をなめ取っていく。そして、そのなめ取る過程でたっぷりと流れていく己の唾液を、また口付けから初めて舌でなめ取る。繰り返し、繰り返し。

そんな壊れたリピートを何周しただろうか。
ふと、ランが寝ぼけたように、唇を振るわせた。

「………もっと…」
「…え?」

ぴたりとスバルの舌が止まる。

「………もっと……して…」

じっと、そこにはスバルを見つめる潤んだ双眸。
その瞳に魅入ったように、スバルは自分の唇をランの口へと運んでいった。
さっきまで頑なに閉じられていたのが嘘のように、ランの口は自然な形に開かれていた。
そして、そこが自分の居場所であるかのように、スバルは自らの舌を挿入していく。

「んっんふっ……」

ぬろぉりと一気に口の奥深くまで差し込まれたスバルの舌に、ランは鼻にかかった呼気を荒げる。
その声に反応してかどうか、スバルはさっと舌を引いた。そして、また一気に深くねじ込む。

「むっむぅん……」

そんなピストンを数度行い、徐々に舌の動きは小刻みになっていき、最後はランの舌半ばをしごくような運動に落ち着いていく。そんな歓迎すべき異物の進入に、ランの口内は唾液に溢れ、またスバルの口からもとめどなく唾液が流れ出てくる。
仰向けになっているランの喉へと、二つの唾液のブレンドは流れ落ちていくのだが、さっきの嫌悪感が夢幻だったかのようにするりとそれは嚥下されていくではないか。

そして、スバルがランの舌を擦りあげるのにひと段落が着けば、二つの舌はまるで蛇のように絡み合っていく。もっと、もっと、もっと、と甘い刺激をねだるスバルとランの舌は、もはや乱暴なほど激しくお互いをお互いでなめあう。
その最中で、スバルは自分が仰向けになるように、ランを抱きしめながらころりと転がった。
今度は、スバルが二つの唾液を飲み込む番。一飲み一飲みに酔う様に、こぼさぬ様に、スバルはうっとりとした表情でランと作った唾液のブレンドに喉を鳴らす。

「っっぷぁ……」

二人が向き合うように、起き上がって正座する。
名残惜しそうに唇を離し、相手の匂いがしない空気を吸い込んだ。

「……はぁ…スバルぅ……」

とろけるような顔と声で、ランは舌を突き出す。
もっと、もっと、もっと、もっと。

「そんな顔するなよぉ……もっと、もっと、もっと、もっとしてやるからぁ……」

もう何度目かの口付けが二人の間に交わされた。
今までのようにディープなものではない。
軽く、唇を触れ合わせるようなそれだが、何度も、何度も、何度も、何度も交し合う。

「嬉しいな……オレ…な…いつもランに突っかかってたけどさ……あんまり相手にされなかったり、かわされたりする事……多くて…寂しかった…寂しかった……」
「うゅ…ひゅ……ごめ……ごめんな……スバルぅ……」
「でも……今…今は……オレを…ランがオレを……見てくれてる……相手してくれる………嬉しい……嬉しい……」

また、スバルがランへと入っていく。
ふやけた二人は、慈しみ合うように、愛し合うように舌をつつきあって。
そうして、もはやこれ以上ないほどに、スバルはランの口を舌でこね回す。
内頬を、歯の裏を、舌の裏まで堪能する、感じあう。
むしゃぶりあう二人の口許からは唾液がぼたぼたとこぼれて板に水溜りを作るが、もう関係ない。
そして、ごく自然な動作で、スバルはランの下半身へと手を伸ばす。
ピクリと、ランは期待に胸震わせるが、反射的に内ももを閉じて目を閉じる。
スバルに自分の秘所をいじられる想像に興奮し、その足にもさしたる力は入っていなかったのだが、

「………?」

まるで、触れてくる様子が無いのだ。
おそるおそるランが目を開けると、くらりとスバルが倒れた。
まるで気絶してしまったかのように木の板に横たわり、ぴくりともしない。

「…スバル…?スバル?」

まだ縛られた手首のせいで、体をよじるような動作で倒れるスバルへ寄るがまるで反応がない。

「当分、起きないわ」

心臓も止まるような驚愕に、ランは背後の声に振り返る。
そこにいたのは、

「ジ、ジーンさん……!!?」

妖艶の紋章術師。

「ごめんなさいね、お楽しみ中。でも、まだ訓練中のスバルにはランと本番はしてはいけないときつ〜く念を押したのに、破っちゃいそうだったから……」

体重を感じさせぬ足運びで、スバルの傍へと移動したジーンは、ランに微笑みかけてやる。
つまりジーンが自分たちの痴態を目撃していた事実に、ランはかっと顔を赤くして目を伏せた。
そんなランが可愛いのか、小さく噴出すと、ジーンはスバルを抱き上げてするすると城の方へと歩いていく。
一歩で常人の十歩を踏み、見る見るうちにジーンとランの距離が開いていく。
しかし不思議なことにランの耳元にはっきりとジーンの声が聞こえるだ。

「大丈夫よ、二人の事は誰にも話さないわ……でも、約束を破ろうとしたスバルにはお仕置きをしなきゃいけないから……ふふ、次の睦み合いはちょっと先になるかしら」

ジーンの姿が完全に見えなくなるのと同時に、ランを戒めていた手首の縄が解けて落ちた。
呆気にとられるように、まだ茹で上がった顔でずっと、ジーンが往った方をランは見つめていた。
ただ、いまだ残るスバルのぬくもりと匂いと味に意識を沈めながら。

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